見えただろうか、勇者の故郷
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第45回スーパーボウルレビュー

Football galvanizer
Sadao Goto
(TOUCHDOWN PRO2011年2月号より転載)

パッカーズ連覇か!?
 男たちが4回目の旅を終え、優勝杯を掲げて北に帰った時、気の早いメディアが来年の第46回スーパーボウル(インディアナポリス)優勝候補の筆頭に、彼らグリーンベイ・パッカーズの名前をあげた。確率は7対1、僅差の8対1でペイトリオッツ、10対1でスティーラーズ、チャージャーズが12対1、ジェッツ、ファルコンズ、イーグルスの3チームが並んで16対1と続いた(ボドグ・コム)。
 第6シードから満身創痍で、14年振り4度目のスーパーボウル優勝を果たしたパッカーズを、来年の優勝候補にあげるのは、うなづける。負傷欠場していた攻守主力ライン、エースTEフィンリー、エースRBグラントなどスターター7人を含む15人が回復して、優勝メンバーに加わるはずだ。負傷多発で優秀な人材を多数失いながら、それをカバーしたマッカシーの情熱と戦術と指導力には、表現方法は好対照だが、故ロンバルディ・コーチに通じる全人格的な魅力を感じる。GMテッド・トンプソンとのコンビのチーム作りは、リーグの王道である。

ウッドソンの涙
 31対25とスティーラーズを下した試合は、点差こそ詰まったが、パッカーズの快勝だった。残りゼロ秒で1点差の大逆転負けをした、2年前の対戦と酷似した追い上げにあったが、だからこそ逃げ切りを信じていた。試合後、マイク・マッカーシー・ヘッドコーチ(47歳)は「2年前の試合フィルムを何十回となく見返して、対策はチームに徹底していた」とさらりとメディアを受け流した。
 ゲーム・バイ・ゲームで展開した多彩な戦術も楽しかった。34体型から展開した、OLBマシューズの覇気と動き、フリーなニッケルバックについたCBウッドソン、両者のブロック潰しはいぶし銀の動きだった。サイコと呼んでいる155守備もDL不足を補う戦術だし、スーパーボウルでの早いダウンでの443体型も意表をついた。FBクーンの活躍を引き出したTボーン体型(バック4人を菱形に並べた体型)も、グラントの能力をもたないバック陣をブロックで生かす戦術だった。
 WRドライバーなど負傷が多発、とくにSSウッドソン(鎖骨骨折)とCBシールズと守備主力が負傷退場した、最後の最後、交代出場したCBブッシュとリーがロスリスのパスを完封したのも、周到な準備を感じた。(ウッドソンが鎖骨骨折したダイビング・パスカットの集中力、みましたか。ハーフタイムの更衣室で「残念!」と涙で絶句したウッドソンに、交代選手は強い刺激を受けたようです)。

SB最衝撃プレーのベスト5
 スーパーボウルの展開は、1週前のNTVでの予想通り(31対25でパッカーズ)だった。第3、第4レシーバー(ネルソンとジョーンズ)が前進力となり、逆転TD狙いのパス不成功が幕切れとなった。獲得距離はパッカーズが338ヤード、スティーラーズは387ヤード。パッカーズが攻撃的守備で、2インターセプト、1ファンブルリカバーと3回のテイクアウェーを記録、試合のモメンタムを引き寄せたのが効果的だった。39回投げ24回成功、304ヤード、3TD、0インターセプト、111・5と高パッサーレイティングを記録したQBアーロン・ロジャーズ(27歳)はMVPにふさわしい。レシーバーのパスドロップが最低3回、RAC拙劣で逃したTDが1回あったので、それが成功していれば、15ポイント上がって、パスレイトは驚異の126・5となっていた。
 米国紙ニューヨークタイムスが それなりに計量化した採点で、スーパーボウルで最もインパクトを与えたプレーを発表している。強い影響を与えるという表現があいまいだが、米国のトップマスコミに敬意を表して紹介しよう。1位は2項目がタイで入り、スティーラーズRBメンデンホールのファンブル(LBマシューズのファンブルフォース)、そして残り5分59秒3d&10での、WRジェニングスのファーストダウン獲得パス。3位はCBコリンズのインターセプト、4位WRウォレスのTDレシーブ、5位WRネルソンが2ヤードラインまで走った38ヤードパスとなる。異論はご自由に。

スタジアム、史上最多ならず
 当日、カウボーイズ・スタジアム仮設スタンドの安全性が確認できず、観客400人の座席が準備できなかった。過失を謝罪したリーグは額面の3倍の補償金を支払い、来年度スーパーボウルの入場券を提供するそうだが、出場両チームを応援にかけつけた観客は失望した。この不手際もあってか、ジェリー・ジョーズ・カウボーイズオーナーが期待した観客数は103、219人にとどまり、史上最大の第14回の103,985人に及ばない、第3位に終わった。開催直前の豪雪の影響かもしれない。
 不況の影響もはねのけ人気上昇が続くNFLだが、FOXテレビが中継した第45回スーパーボウル番組は、全米テレビ史上最高の1億1100万人が視聴した。去年のCBS放送より450万人多く、平均視聴率も46パーセントとなり、86年第20回(ベアーズ対ペイトリオッツ)の48・5パーセントに次ぐ史上第2位となった。地域別の視聴率トップはピッツバーグの59・7パーセント、これも86年のシカゴの48・5パーセントにつぐ史上2位となった。
 (それにしてもカウボーイズ・スタジアムのスクリーンは大きい。ちょうど両20ヤードライン間の上部にスクリーンがくる。正面またはバックスタンドどちらから見ても、フォールドと同じ光景が映るのは、カメラが2台あるのだろうか)

ビックとグッデル
 スーパーボウルが終わり、NFLは選手会とオーナー側が対立するCBA(労働協約改定)の話題一色となった。双方の要求がかなり離れており、オーナーがロックアウトする可能性も現実味を帯びてきたが、調整役となったロジャー・グッデル・コミッショナーの表情には思ったより陰りはなかった。フットボールが好きで、叩き上げてこの座についた彼への信頼は、推測するより、ずっと高い。上院議員の息子というエリート育ちだが、選手と正面から向き合う信念と、毎週必ずスタジアムを訪れ、テールゲート中の観客100人以上と写真を写り話し合うフランクさで、信頼を広め、今や米国スポーツ界最大の実力者と評価されている。
 彼とマイケル・ビックの交流の話がある。闘犬賭博容疑が出た頃、グッデルはビックを呼び、彼の目を見つめて、「噂は本当なのか」と問うた。ビックは目を伏せたまま、「違います」と答えた。裁判の結果、ビックは闘犬で有罪となり、懲役刑のため牢獄で暮らした。その時に、彼を苦しめたのはグッデルに嘘をついしまったことだった。刑を終え出獄したビックはグッデルを訪ね、嘘を詫びた。それを聞いたグッデルは「彼はそれを説明する責任があると感じ、一緒に努力を開始した」と振り返っている。グッデルは彼に6試合(のちに4試合に短縮)の出場停止を命じた。それから2人は1か月に3、4回電話またはメールで連絡をとりあっている。今年の1月9日、イーグルスがパッカーズに敗れたその30分後に、グッデルはビックにメールを送った。「敗戦は残念だ。素晴らしいシーズンだった。これまでやってきたことを忘れにないように。私は君を誇り思う」。数分後にグッデルは返信を受け取った。「ありがとう、ロジャー!私は家族や君が誇りを持てるように努力しつづける」。(SI誌より抜粋)
 グッデルならば、難問のCBAを解決出来る気がする。

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