異才ビックの挑戦

第45回スーパーボウル(案)

Football galvanizer
Sadao Goto
(TOUCHDOWN PRO2010年12月発売号より転載)

プレーオフ出場12チーム
 あのミラクルコンビは、2月6日、ダラス・スーパーボウルに現れるのだろうか。

 第15週を終了、残り2週。まだまだこの大混戦を楽しみたい、止めを刺してこのいらいらを終わらせたい、どちらもマニアの本心で、プレーオフを前に、気分は勝手に揺れ動きます。
 戦術、技術、能力とくに打撃(破壊)性能の著しい向上で、NFLはさらに疑似戦争の様相を強くしました。
 1月8日から開始するプレーオフへの出場を決定したのは、AFC東のニューイングランド・ペイトリオッツ(11勝3敗)、北のピッツバーグ・スティーラース(10勝4敗)、NFC北のシカゴ・ベアーズ(10勝4敗)、南のアトランタ・ファルコンズ(14勝2敗)の4チームだけ。
 開幕前に優勝候補としてあげられたダラス・カウボーイズ(5勝9敗)はメンタルの欠落、ミネソタ・バイキングス(5勝9敗)は戦術的劣化、得点力激減のテネシー・タイタンズ(6勝8敗)も完全脱落、主力の負傷に泣いたインディアナポリス・コルツ(8勝6敗)が必死に地区首位を守っています。
 この4チームを追って、なんとかプレーオフにたどり着くのは、AFCでは東のニューヨーク・ジェッツ(現在=以下同じ=10勝4敗)、北のボルティモア・レイブンズ(10勝4敗)、南のコルツ、西のカンサスシティ・チーフス(9勝5敗)。NFCでは、東のフィラデルフィア・イーグルス(10勝4敗)、ニューヨーク・ジャイアンツ(9勝5敗)、、南のニューオーリンズ・セインツ(10勝4敗)、西のセントルイス・ラムズ(6勝8敗)でしょう。

結局今年は、NFCは東南、AFCは東北
 プレーオフの勝ち上がりは、結局、AFCは東地区のペイトリオッツとジェッツ、北地区のスティーラースとレイブンズと2つの地区から、NFCは東のイーグルスとジャイアンツ、南のファルコンズとセインツ、同じく2地区の代表に絞られるでしょう。私のベスト8です。
 AFCでは、第15週に不振だったQBサンチェスがスクランブルで唯一のTDをあげてジェッツが22対17でスティーラースを下し、3連敗を防ぎました。激しい守備が売り物ですが、反則数が97でライアン・コーチの指導力の限界を感じますが、トップ守備対決を制した誇りは買えます。レイブンズも、6連勝中だったセインツを相手に30対24と逃げ切り、4Qに弱いとの悪評を吹き飛ばした。しかし、反則は82回とやや高め、ミーン(汚い)との噂は実証しています。2年目のQBフラッコはWRボールヂンの補強もあり、8インターの94・8と序盤からプレーオフモードです。RBライスがアイドルからスターへの脱皮中。
 スティーラースは、今年も守備の破壊力は傑出しており、平均15・7失点はリーグ第1位、喪失距離も3位、異才Sパラマールが代表する要所での美技で、ターンオーバーレシオはプラス14とリーグ2位です。ただ、前期オフの不祥事で悪役になってしまったQBロスリスバーガーに安定感を失い、追い上げにこれまでの迫力を欠きます。

 NFCでは、第15週の月夜に、プレーオフ第4号に滑り込んだベアーズは、第8位の守備がベースになり、RBフォーティのラン、マーツDCを迎え20TDパスと決定力を増したQBカトラーが頑張った。
 ファルコンズは8連勝中。楽な対戦相手にも恵まれ、強いRBターナーのラッシングをベースに、QBライアンからWRホワイトのパスコンビが切り札で、安定感は随一です。ホワイトの106捕球、1284ヤードもいずれもNFL第1位。ただし、チームとしてのバックボーンは、33分14秒でリーグ1位のボールコントロール力、反則数も53回とトップ級の規律があり、リーグの模範生的存在です。
 セインツは攻守の主力が故障から復帰して、QBブリーズが昨年並みの調子を取り戻してきました。前半は落球が多く、パッサーレーティングは8位、93・5ですが、得点7位、失点9位と安定していますし、得失点差が6・2点と、前述のトップ8チームなかでも4位とバランスがとれています。反則も77回と少なく、チームプレーへの高い認識を感じます。
 ジャイアンツは攻撃3位、守備2位と、チーム成績の数字には文句ありませんが、9勝5敗でワイルドカード争いにとどまっているのは、要所での決定力不足です。若手WRはそこそこの成長したが、波が大きく負傷も多く、QBイーライ・マニングは87・7で17位にとどまっています。看板のサック数も42回とリーグ2位ですが、ターンオーバーが少なくレシオはマイナス1です。

 イーグルスは、QBにマイケル・ビックを起用してから、チームが変わりました。正しくは、ビック自身の進化です。スタート11試合で8勝3敗。とくに負傷から復帰した9週以降は6勝1敗、自らを制御していた、リミッターを取り外したようです。判断力、集中力が一桁アップ、アスリート能力をフル稼働させています。同じメカニズムを持つ、WRデショーン・ジャクソンが同調して、まるで異次元のパフォーマンスです。ビックのレイトは、103・6、リーグ3位。第15週のジャイアンツ、史上初の残りゼロ秒でのジャクソンのリターンTDには、異端の能力に対する選手たちの信頼を感じます。看板のブリッツ守備はプラス14のレシオですが、反則も攻守合計で113回と多く、チーム全体に移行期の荒さを感じますが、なにかが生まれる予感はあります。

 客観的な判断では、スーパーボウルはペイトリオッツ対ファルコンズでしょう。しかし、エキサイトしたいなら、ペイトリオッツ対イーグルスでしょう。
 負傷による2年間のリハビリを終え、パッツのQBトム・ブレイディは完璧なQBとなりつつあります。最近10試合連続インターセプトなし、今季はウエルカー、ブランチ(移籍復帰)に加え、3人のTEを自在に組み合わせた新しいパス攻撃を構築しながら、選手を鼓舞するリーダーシップもみせ、理想のQBを追求する姿勢を感じます。若い守備も、ベリチック主導の155あるいは254体型から、パーソネルス(起用選手)を自在に変えて、攻撃の対応を封じます。総合力、は随一でしょう。31・5得点はリーグ1位、21・6失点は16位ですが、平均得失点差では9・9点と図抜けています。ターンオーバーレシオはプラス20と突出、2位に6差をつけています。反則も攻守合計で72回と少なく、まさに理想のチームでしょう。
 ファルコンズの初優勝、セインツの連覇、ジェッツ対ジャイアンツのNY対決なども楽しいですが、波乱の今年の締めくくりは、異次元対決ともいうべき、パッツ対イーグルスを期待しています。奇才アンディ・リードが天才2人を核にベルチックの守備になにをしかけるのか、ブレイディーが強圧守備をいかに翻弄するのか、とりあえず、あと1か月は頭の中で十分に楽しめそうです。(12月21日)あ、ビックには負傷しないように伝言ください。

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