ニッケルの攻防

『11月SB』ペイトリオッツが僅勝

Football galvanizer
Sadao Goto
(TOUCHDOWN PRO2010年11月発売号より転載)

ビックの挑発
 第10週、11月15日の月夜試合で、イーグルのQBマイケル・ビックがみせた快投快走は優勝争いすら揺さぶる、異次元のパフォーマンスだった。状況判断、タイミングを含めたパッシングは完璧、超長短のパスを矢のように投げ込み、快足で守備を置き去りにして、満員のレッドスキンズファンを沈黙させた。第11週終了して、パッサーレイティングは109・7で、リーグ2位のリバース(チャージャース)に約5ポイントの差をつけた。インターセプトは0、TDは11。トップアスリートのリミットを取り外した全力発揮、とくに鋭いスクランブルは守備への挑発ともなり、ハードヒットを受ける可能性も高くなる。残り6試合には因縁がからむ同地区対決、ジャイアンツ、カウボーイズ戦が2試合づつ残っており、ビックの負傷が怖い。
 今季は脳震盪を予防するために、ヘルメットによる痛打が規則で厳しく制限されたが、偶発打撃による負傷も多く、目に見えた効果はなく、過激さは増した感すらある。

狭まったプレーオフへの道
 混戦が続き、全チーム8勝8敗になるとタイブレーク判定はどうなるのかと笑い話をしていた序盤だが、中盤を迎え、一気にプレーオフ出場争いが、各地区2チームに整理されてきた。第11週終了時点で、AFC東はジェッツとペイトリオッツ(以上8勝2敗)、北はレイブンズとスティーラース(以上7勝3敗)、南はコルツとジャガース(以上6勝4敗)、西はチーフス(6勝4敗)とレイダース(5勝5敗)。一方NFCは、東がイーグルス(7勝3敗)とジャイアンツ(6勝4敗)、北がパッカーズとベアーズ(以上7勝3敗)、南がファルコンズ(8勝2敗)とセインツ(7勝3敗)、西がシーホークス(5勝4敗)と49ナース(3勝6敗)。中盤に力をつけてきた、AFCは南のタイタンズ(5勝4敗)、NFCは南のバッカニアーズ(6勝3敗)の2チームが追い上げそうだ。不振でフリップスが解任され、第10週からギャレットOCがヘッドコーチ兼任となったカウボーイズが6週ぶりに2勝目をあげた。敵役だったジョーンズ・オーナーだが、男の誇りを賭けたホームでのスーパー優勝を逸した顔には、哀愁が浮かぶ。
 スーパーボウルは、ジェッツ対ジャイアンツのニューヨーク対決が楽しそうなのだが。

ダーティな選手トップ5
 選手100人の投票による前半戦のMVPに、ペイトン・マニング(コルツ)が選ばれた。スポーティングニュース誌恒例の調査で、フィールド上の実際を反映していると信頼性高くで、またマニングかといった感想より、さらにレベルをあげた優秀な選手だというのが伝わる。ペイトンは27票、次点は14票のトム・ブレイディ(ペイトリオッツ)、3位は10票で今年ブレイクしたRBエイリアン・フォスター(テキサンズ)だった。
 マニングの高評価は、「もっともゲームプランを立てにくい選手」の調査にも反映している。飛びぬけた30票の1位である。テキサンズのCBグローバー・クインが寄せたコメントには、選手レベルではお手上げ状態であることを告白している。「史上最高のQBの一人で、ペイトンがフィールド上で出来ないことはなにもない。彼をタックルすることは出来るが、フィールドから追い出すことは出来ない。彼は打たれ強く、賢い。フェイクだと気が付いた時には、すべてはスクリメージラインを越えている。彼がすることに気が付いた時に、彼はもう別の行動をとっている。彼をだますことは絶対に出来ない。彼はすべてを理解している。彼は絶対に自分自身にもまけない強さを持っている」。
 『ゲームプラン出来ない』には、行動が読めない選手と、完璧な準備をする選手の二通りあるようだ。行動が読めないタイプは、9票で2位に入ったQBビック(前述)、そして豪快なフリーランス守備に定評があるSトロイ・ポラマール(スティーラース)。8票で3位のQBドリュー・ブリーズ(セインツ)は、マニングと同じ後者に属する。
 きわめて主観的で、『本人の感想ですが』との注意書きをつけた、最もダーティな選手のアンケートの第1位は、なんとはCBコートランド・フィネガン(タイタンズ)、キャッチした瞬間のハードヒットからの評価だろうか、19票を集めた。2位は16票をあつめたLBジェームズ・ハリソン、3位は13票のWRハインズ・ワードとスティーラースの選手が並んだ。ハリソンは手抜きのなしつまり容赦のないタックル、ワードはブラインドサイド(反則)すれすれのハードブロックに対する非難だろう。4位以下は、10人以下の投票になるが、4位はGリッチー・インコグニト(ドルフィンズ)、5位タイに、Sブランドン・メリーウエザー(ペイトリオッツ)とCドミニク・ライオーラ(ライオンズ)が並んだ。
 その他、CBA(改訂労働協約)の締結時期の予想では、2011年夏と来季直前を予想するのが主流で39票、2011年春が29票、2011年秋が20票でした。残りの11票は、今季中。
 検討というかリーグが強引に進めようとしている、シーズン18試合制。選手報酬を増額した実施に賛成するのは、25票。反対は73票でした。

ニッケルバックとニッケルバッカー
 トップチームのハイレベルな攻防で数々の名勝負を残し『リアルスーパーボウル』と呼ばれる、ペイトリオッツ(以下パッツ)対コルツが、第11週に開催され、31対28でパッツが逃げ切った。試合は第4Q残り10分まではパッツのペース、名手ペイトン・マニングのパスを2度インターセプト、ブレイディのパスを生かした攻撃で31対14と大量リードを奪った。コルツの追い上げは、三軍RBドナルド・ブラウンの36ヤードランから。マニングがノーハドルで守備戦術の弱点をつき、WRブレア・ホワイトに5ヤード、18ヤードの2つのTDパスを通したが、終了直前の逆転を狙ったパスが守備の美技に3度目のインターセプトを喫した。ブレイディの25回で19成功、2TD、0Iでパッサーレイティングは123・1、マニングは52回で38成功、4TD、3Iで06・3、トップQB対決はブレイディが制した。
 昨年はペイトリオッツが自陣の第4ダウンに強行して話題となったが、今年の攻防で注目したのが、コルツの第4WR対パッツのニッケルラインバッカー(5人目のラインバッカー)またはニッケルバック(5人目のカバー要員)の攻防だった。コルツがこの日のために周到に準備したのが、今季これまで僅か1捕球の3年目のTEギヨン・ロビンソンと、9キャッチの新人WRブレア・ホワイト。ニッケルバック、ニッケルバッカーにマッチさせる4人目に起用して、2人で3TDを奪った。しかし、残り31秒に自陣6ヤードで勝負を決めるインターセプトをしたのは、パッツNBのジェームズ・サンダースで、この試合での攻防は五分、勝負はプレーオフでの再戦に持ち越された。

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