フロリダ、万歳!

(TOUCHDOWN PRO 3月号=1月30日発売号から転載)

2005年1月24日
 

 ジャクソンヴィルに行くのは15年ぶりになる。前回は、ゲーターボウルの取材だった。時間を作って訪れたアリゲーターファームと南北戦争の史跡に射す強い陽光が印象に残る。今回はそんな暇はなさそうだ。
  2月5日(日)オールテル・スタジアムには、シーズン開始前に、誰もが予想した2強が勝ち残った。シンデレラはプレーオフに周到な準備を重ねたトップ2に一蹴された。

強者の世界
 1月23日、たった今、両カンファレンスのチャンピオンシップが終わった。
最初に行われたNFCは、フィラデルフィアの厳しい寒気の中、イーグルスが27対10とファルコンズに完勝し、続いて行われたAFCも、寒風のピッツバーグで、ペイトリオッツが41対17でスティーラーズを圧倒した。いずれの試合も、今期のシンデレラチームを、プレーオフ常連の強豪が一蹴した。
  試合後のサイドラインは対照的

  だった。過去3年連続して選手権試合で敗退、ここ一番に弱い小心チームとの烙印を捺されかかっていたイーグルスは、スーパー出場の感激をむきだしにして、アンディ・リード・へッドコーチにゲータレイドシャワーを浴びせた。イーグルスにとってはじつに24年振りの出場で、初の優勝を狙うことになる。
  一方、ペイトリオッツはサイドラインから淡々と引き上げた。2年連続そして最近4年間で3回目の出場となるスーパーボウルは、彼らの気持ちの中ではレギュラーシーズンゲーム、そう彼ら自身のココロに言い聞かせているように見えた。通算で5回目の出場で、優勝すれば3度目となる。
  イーグルスは強者とすれば、ペイトリオッツを勝者と表現できるだろう。強いから勝つのか、勝つから強いのか、アメリカンフットボールでは当然後者である。英国生まれのラグビーやサッカーは、得点つまり勝敗は結果にすぎないが、フットボールでは勝敗は目
 

的で、それしかない世界である。サラリーキャップ制などで戦力の均衡化が図られ、いわゆる王朝と呼ばれる1チーム独占は不可能といわれるNFLだが、ペイトリオッツは卓越した組織力でダイナスティを構築出来るのだろうか。

対決の構図
 斬新な組み合わせと感じる。
  もちろんスーパーボウルでは初対決、対戦決定が確定する30分前、つまりAFC第3Q終了時には、ネット上では、公的スーパーボウル予想第1号が出た。米国マスコミにとってスーパーボウルは別格で、1年間待った非公式のイヤーエンド扱い、日常生活のすべてをこの日に凝縮しようとする米国の強い意志すら感じてしまう。
  俗な表現に頼れば、現代NFLの頂点に伝統の強豪が挑戦するといった図式だろうか。実戦のイメージとしては、ビルズがカウボーイズと対戦した第27、28回

 

のスーパーボウルが思い浮かぶ。強力タレントをそろえたビルズが、攻守蹴揃ったカウボーイズに挑んだ試合だった。いずれの試合も、カウボーイズが思わぬ大差で優勝をとげた。
  QBマクナブの強いリーダーシップに敬意を払ってイーグルスをワンマンチームと呼ぶと、ペイトリオッツの高度な組織力にはチーム・アルティメットの異名をつけたい。ペイトリオッツのベルチック・ヘッドコーチには、先端企業のCEOに似た環境=市場分析があり、リソースの有効活用がある。
  フロリダ万歳と叫ぶのはどちらだ。

注目したいイーグルス・セカンダリー
 注目してもらいたい選手はたくさんいる。なかでも今年イーグスを推さなかった理由の一つである守備だが、驚異的向上をもたらしたセカンダリーは、試合の鍵を握るラン守備にも影響する、イーグ

  ルスの生命線だろう。
  Sブライアン・ダウキンス(4インターセプト、3サック、30歳)は、鋭い加速と運動能力を持つ優秀なカバーマンだが、出色なのはスピードを生かしたハードヒット、激しさはリーグ一といわれる。SSマイケル・ルイス(1インターセプト、24歳)は、強気でボール勘の良く、反応も早く、若いがリーダーシップもある。CBリト・シェパード(5インターセプト・2TD、23歳)は図抜けた機敏性がある。ボールへの集中力も高い。
 LBジェレ・トロッターズ(1サック)はラン守備の要で、OT―OTに穴をあけない。プレーアクションにかかり、マンカバーに弱いのが弱点。 イーグルスにとって、QBブレイディのショートパス・ボールコントロールを彼らが止めなければ、早く決着がついてしまいかねない。
  マクナブ、ブレイディの本当の評価
 イーグルス攻撃の軸であるQBドノバン・マクナブ(28歳)を、米国のプロスカウトレポートから、冷静に観察してみた。
  傑出した脚力。ポケットで時間を稼ぐ稀な能力を持ち、視野も広い。パスラッシュを感じ取りタックルを避けるクイックネス(動き出しの速さ)もある。フリーのレシバーを発見するのも、セットアップするのも速い。最近は守備を読むのも速くなった。縦への深いパスにも、速さと精確性がある。投げ急ぐより、守備の穴を見抜く重要性を感じてきた。走りながらのパスも安定して、ロールアウトでの正確性も向上した。弱点は、依然として正確性に波があり、その日によってムラがあること。しかし、責任感が目覚め、04年は、すべてに飛躍中。
  一方、過去スーパーボウルMVP2回のペイトリオッツQBトム・ブレイディ(27歳)の客観的なスカウトレポートもある。
   ペイトリオッツのパス主導ボールコントロール攻撃に真の理解者、ショート・ミドルのパスゲームは完全、優れた身体サイズ、優秀な運動能力、強肩と速いリリース、しかし最高の能力は自信と強圧にも動揺しない精神力で、チームメイトに好影響を与えている。投球メカニズムは優秀、ポケットでのセットアップは速い。ダウンフィールドのパスが向上、ポケットを利用して、プレーの伸展の判断する視野の広さは出色。入念な試合への準備もあり、ゲームプラン会議で鍵となる役割を担っている。ただし、巧みに守備をかわす動作は未熟、スクランブルに脅威はない。

 公的予想(ラスベガス)はペイトリオッツ6・5点優位と発表した。公式賭博の責任者は予想の根拠として、ベルチックの名前をあげた。「ベルチックは完璧なゲームプランを作る。世間はそれを知っているし、誰もが確実な勝者を愛している」。
    オーバー&アンダーは46〜48点。昨年の公的予想はペイトリオッツが7点優位、試合は予想通りに3点差の32対29でパンサーズを下した。
  私の予想は、24対17でペイトリオッツ、楽しいゲームになるのは間違いない。