3―4守備

2009年NFL4つのトレンド

Football galvanizer
Sadao Goto
(TOUCHDOWN PRO2009年12月発売号より転載)

 もし明日がスーパーボウルだったら、セインツ対コルツの対戦で、初出場のセインツが、初のシーズン全勝同士の対決を制して、初優勝をとげるというのが、私の周辺の(大変身勝手な)予想だ。この予想の目玉は、いまだかつてない全勝同士の決勝戦。まさに夢のスーパーボウル実現となるのだが、まだ12月15日、あと3週も残っている。両チームとも比較的に楽な相手だけに全勝の可能性は大きいのだが、コルツは前週で*印(プレーオフ出場とプレーオフ本拠開催権)を獲得した。負傷が日常のスポーツなので、QBペイトン・マニングなど主力を温存するかもしれない。セインツはまだZ印(地区優勝決定)なので、もう1週は必勝のパターンで望むだろう(明日プレーオフが開始したら、出場するのは、AFCはペイトリオッツ、ベンガルズ、コルツ、チャージャーズ、ブロンコス、ジャガーズ。NFCは、イーグルス、バイキングス、セインツ、カーディナルス、カウボーイズ、パッカーズ。下線6チームが連続出場)。

8勝8敗のグッドラック
 全勝のニューオーリンズ・セインツ(NFC南地区)には、今やチームのハート&ソール(フィジカル&メンタルの原動力)となったQBドリュー・ブリーズ(9年目、パデュー大)がいる。入魂のパスを連発して、パッサーレイティングは112・3でリーグ1位。QBには稀有の例だが、試合前ハドルでの気迫のペップトークでチームの心を一つにする。クールなアカデミック・オールアメリカンが、ニューオーリンズで災害に遭遇して、地域社会を愛する熱血のリーダーに変身した。ピエール・トーマス、マイク・ベル、レジー・ブッシュと個性豊かなRB陣が揃い、守備の最後尾にはインターセプトでリーグ2位のSダレン・シャーパーがいる。ブリーズの高パスTD率(7・4%)とリーグ2位のチーム・インターセプト数(24回)は、要所での高い集中力を現す数字である。07年度ジャイアンツ、08年度カーディナルスと続いた、前年度8勝8敗からスーパーボウル出場する仰天の系譜はセインツに受け継がれるのだろうか。

たいへん若いヘッドコーチの誕生
 次々と斬新なシーンが出現するNFL、今年のトレンドを4項目にまとめてみた。
 1つ目は、青年ヘッドコーチの起用。これは、34歳のマイク・トムリンをヘッドに起用したスティーラーズが、就任2年目の昨年、優勝したことが呼び水となった。バッカニアーズが32歳のラヒーム・モーリスを、ブロンコスが同じく32歳のジョシュ・マクダニエルを、ブラウンズが37歳のエリック・マンジーニを起用した。終盤までの成績は、順に、1勝12敗、8勝5敗、2勝11敗。新NFLを強調するメディアはブロンコスのサイドラインで走り回るベースボールキャップのマクダニエルは何度も放映した。「成功すれば王朝時代が築ける」(アート・ルーニー・スティーラーズ・オーナー)が、失敗する可能性も少なくない。
 青年のヘッド起用は、昔からあった。スティーラーズは37歳のチャック・ノルと34歳のビル・カウワーを、コルツは(63年に)33歳のドン・シュラを起用したし、ブラウンズは38歳のビル・ベリチックを、オイラース(現タイタンズ)は36歳のジェフ・フィッシャーをヘッドに任命している。
 マンジーニとモーリスは順調とはいえないが、そこに年齢による影響はないだろう。年齢によるマジックはないし、年齢による弊害もない。34歳のスティーラーズLBジェームズ・ファリアはトムリンについて「彼はコーチ、年齢は関係ない」と断言した。
 マクダニエルに米国メディアが「貴方の年齢は選手と関係をもつのに有利ですか、それとも不利ですか」と質問した。彼の答えは、「このリーグに来て大分前に学んだことですが、選手が勝つことの助けになり、チームが勝つことの助けになり、選手が以前より良いプレーすることの助けなる何かを選手に話そうとしたら、(年齢に関係なく)部屋の選手全員が集中して話を聞きます」。

新人スタートQB
 2つ目は、新人QBのスターター起用。去年、1巡指名で入団したマット・ライアン(ファルコンズ)とジョー・フラッコ(レイブンズ)が、いきなり全試合にスターターとして出場、チームをプレーオフに導く活躍をした。圧倒的なスピードの差、複雑な攻撃戦術、多様な状況判断、変化する守備への対応などで、経験が欠かせないとされたNFLでのスタートQBの垣根があっさり倒れた。今年は、ライオンズがマシュー・スタッフォードを、ジェッツがマーク・サンチェスをスタートQBに起用した。スタッフォードは負傷(予期された早期起用トラブル)と非力なチーム力のために、スタート試合は1勝9敗。サンチエスは右膝負傷で第14週は欠場したが、6勝6敗。

ワイルドキャット只今11匹
  トレンド3は、ワイルドキャット体型の普及。ご存知、昨年の第3週、ドルフィンズがペイトリオッツ戦でサプライズ攻撃として展開、38対13と圧勝して、注目を浴びた。ドルフィンズは昨年度に100プレー以上のワイルドキャットを展開して、平均は7ヤードを超えた。チームが1勝から11勝に急上昇した要因の一つでもある。今年は、ブロンコス、コルツ、ジャイアンツ、ライオンズ、パッカーズ、レイブンズ、レッドスキンズ、セインツ、スティーラーズ、テキサンズ、タイタンズと合計11チームがプレーブックにワイルドキャットを掲載した。各チーム共に体型名も独自性を出しているらしいが、確認出来たのは「ワイルドホース」しかない。もちろん、ブロンコスでの体型名である。
 成否の鍵は、ドルフィンズのダン・フェニング攻撃コーディネーターによれば、「もし(本格的に)取り組むなら、ボールの安全確保と効果的にパスをミックスすること」。ドルフィンズのRBロニー・ブラウンは去年の100スナップで1回もファンブルロストが無かった。今季は、対戦守備がワイルドキャットに即応して、守備バックを上げてボックス8人でランを完封するシーンも散見して、局所での探りあいが続いている。

3−4守備体型の復活
 セインツ、コルツの攻撃力に注目が集まっているが、4つ目のトレンドは3−4守備体型の普及だろう。
 80年代にスティーラーズが採用、90年代序盤にはディック・ルボーとドム・ケイパースが考案したゾーンブリッツで注目を集め、さらに最近、スーパーボウル史上最強といわれたレイブンズが4−3から移行して話題となり、ダウンラインマン3人、LB4人で前線を守る3−4体型をとるチームが年々増加してきた。「それは、守備トップの2チームが使用しているから当然」というのは、今季レイブンズの守備コーディネーターからNYジェッツのヘッドに就任したレックス・ライアン。3−4守備が即効してプレーオフ争いに加わっている。
 今年は13チームが3−4をベース守備に採用した。ブロンコス、ブラウンズ、カーディナルス、チャージャーズ、チーフス、カウボーイズ、ドルフィンズ、49ナース、ジャガーズ、ジェッツ、パッカーズ、レイブンズ、スティーラーズ。
 3−4守備の利点は、4人のLBを利用した多彩な守備戦術を展開できることだ。LBには深い戦術理解が必要だが、なかでも最重要任務である、ブラインドサイドからのパスラッシュを主担当とする、左OLBが成否の鍵を握っている。じつは3−4守備が普及しなかったのは、左OLBをこなせる選手がいなかったから、とも言われる。
 大学のLBではサイズが足りない。それをカバーするために、NFLのチームは大学での有能DLをドラフトして、LBにコンバートする方法を選んだ。その成功の典型が、ブロンコスのOLBエルビス・ドゥーマビル(4年目)だ。DEとして入団、3年間で26サックを記録する活躍だったが、今年DCに就任したマイク・ノーランは4−3から3−4守備への移行を発表して、ドゥーマビルを悩ませた。3ポイントスタンスのDEとしては成功していたが、2ポイントスタンスつまり立った姿勢でのOLBは初体験だからだ。
 DEと違い、3−4のOLBには高度な判断が必要だ。例えば、5人のOLあるいはTEをキーとする代わりに、全体の攻撃体型を読み、そこからのパッシング・ルートを理解しなければならない。いかにパスカバレッジ・スキームに入るかも知り、自分たちのディフェンス・コール(守備戦術)がQBにどこにパスを投げさせようとしているのかを理解しなければならない。「ダウンラインにとっては厳しい仕事だといわないが、彼らの常識にある世界ではないね」(元ジェッツLBバーノン・ゴルストン)。
 ドゥーマビルの不安を消したのはノーランの対応だった。小柄な(180センチ、118キロ=ほぼジェームズ・ハリソンと同じ)彼の持ち味であるスピードを生かすために、ランまたはショートヤーデッジのダウンにはスタンダップポジションを、パッシングのダウンにはスピードを生かせる3ポイントのスタンスをとらせたのだ。結果は大成功。第15週で、リーグトップの15サックを記録している。ルイビル大時代にストリップサックと異名がついた、ファンブルフォースも目だってきた。
 第13週終了時の守備成績をみれば、3−4守備チームは、1位にジェッツ、3位にブロンコス、以下4位スティーラーズ、8位レイブンズ、11位ペイトリオッツ、12位チャージャーズ、14位カウボーオズ、18位49ナース、19位ドルフィンズ、20位ジャガーズ、25位カーディナルス、30位チーフス、31位ブラウンズ。まずまずとしか言いようのない順位である。

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