サプライズ4もう一つの原動力

2009年NFL惑惑の10月

Football galvanizer
Sadao Goto
(TOUCHDOWN PRO2009年10月発売号より転載)

急上昇、サプライズ4
 エンドゾーンに全速力で走り寄る、ファーブの背中が笑っている。豪快な逆転パスを連発して、ミネソタ・バイキングス(NFC北地区)は全勝。「今年のカージナルスはどこだ?」と、シンデレラチームを探す米国マスコミだが、いかに扱うべき迷っていたバイキングスも無視出来なくなった。
 第6週終了(10月19日)時点で、全勝は4チーム。AFCに2チーム、コルツ(南地区)、ブロンコス(西地区)。NFCに2チーム、バイキングスとセインツ(南地区)である。サプライズ4に、コルツとバイキングスを入れるのは申し訳ないが、スーパー狙いの意味を込めて、驚かせて頂いた。
 この4チームの顔ぶれを見て、すぐに思いつくのは強力なオフェンス力だろう。コルツのQBペイトン・マニングの正確なパッシング攻撃、ブロンコス伝統のゾーン・ラッシング、バイキングスにはリーディングラッシャーのRBエイドリアン・ピーターソンがいるし、セインツには投げまくるQBドリュー・ブリーズがいる。しかし、今年この4チームに共通しているのは、じつはディフェンス、苦手とされていた守備力の飛躍的向上があった。

ブロンコスの急上昇力
 昨年8勝8敗でプレーオフ出場を逸したブロンコスは、2度スーパーボウルを制したシャナハンを解雇して、前ペイトリオッツOCだった33歳のジョシュ・マクドニエルズをヘッドコーチに起用した。大御所から若手新人への大胆すぎる変更に、再建の1年目というより指導者模索の時代が始まるのでは危惧する関係者もいたという。
 マクダニエルズは面談1回のみで、若手実力第一位といわれたQBジェイ・カトラーをあっさりベアーズにトレード、大幅な選手の洗い直しの末、ロスター45人中27人を入れ替えた。
 攻撃戦術の天才といわれた彼が、最初に取り込んだのがディフェンスだった。就任と同時に、守備DCに迎えたのが前49ナース・ヘッドコーチ、50歳のマイク・ノーランだった。「移行する34守備への哲学が共通するので、マイクを選んだ。2人はフィットして、守備のコーチングにも、私の助言をうまく生かして、期待以上の結果が出てきた」とマクダニエルが語っている。彼はペイトリオッツに入団した01〜04年、守備アシスタントを務めて現場知識は深い。ペイトリオッツで成功した34守備をブロンコスに持ち込んだ。
 ガラリと8人を新スターターにした守備チーム、とくに前7人は5人が新しくなった。鍵となるLB陣には、鋭さを増したエルビス・ドゥーマビル、D・J・ウイリアムズ、新加入のアンドレ・デービス(前ブラウンズ)、マリオ・ハガンズを、そしてCB名手チャンプ・ベイリーに加えて、オールプロのFSブライアン・ドーキンス(前イーグルス)を迎えたのが大きかった。序盤では、セカンダリーがタイトカバーして相手QBに長くボールを持たせて、LBのラッシュでサックを奪うシーンを連発した。ドゥーマビルは6週時点で10サック(!)、チーム合計20サック。10ファンブル・リカバー、6インターセプト。ほぼ無敵な状態である。
 昨年の不振を象徴したリーグ30位(試合平均28失点)だったスコアリングディフェンスも、今年は6週時点で平均失点は僅か11点、もちろんリーグトップである。
 同じように失点守備をみれば、コルツは昨年度7位(20・8点)から2位(14・2点)とアップ。27位(24・6点)でネット状態だったセインツ守備は6位(18・6点)へと急上昇、インターセプトはリーグ1位の11を記録している。若干下げたのが13位(20・8点)から19位(20・2点)となったバイキングスだが、確認すればわかるように、実質失点は0・2点下げている。

サプライズ4の無過失パッシング
 もとより攻撃力には定評があったサプライズ4チームだが、今年は主役であるQBがそれぞれ絶好調、というより完全にワンステップ・アップしている。
 これも6週終了時点のパッサー・レーティングだが、上位にはサプライズ4がずらり。1位にセインツのドリュー・ブリーズ(レート118・4)、2位にコルツのペイトン・マニング(114・1)、3位にバイキングスのブレット・ファーブ(109・5)、8位にブロンコスのカイル・オートン(100・1)がいる。昨年度は、それぞれ4位(96・2)、5位(95・0)、21位(81・0)、25位(79・6)だった。ブリーズ、P・マニングの安定したパス力は定評があるが、40歳を迎えたファーブ、そして『その他大勢』と評価されていたオートンの安定性の向上の裏には、おおきな動機付けとなるなにかが隠れているのだろう。
 記録の中で注目したい数字は、TDの多さとインターセプトの少なさ。この両者のバランスが大きくレートに影響するが、紹介しておきたいのは被インターセプト率だ。ブリーズの被インターセプト数は僅か2、率にすると僅か1・3%に過ぎない。P・マニングは4回で2・2%、ファーブは2回で1・1%、そしてオートンはじつに194回のパスを試みながら、僅か1回、0・5%に被インターセプト率しかない。一般的に3%が及第点といわれている中、もともとミスの少ないオートンとはいえ、この数字にはブレイディを育てたマクダニエルの手腕のすごさが凝縮されている。

ブレイディのターゲット率
 ペイトリオッツのQBトム・ブレイディが序盤悩んでいる。史上最高のQBといわれながら、1シーズンぶりに負傷から復帰した今年は、成功率の低下に悩み、レーティングが一時は80代前半(18位)まで下がった。チームもすでに2敗(4勝)した。
 序盤のブレイディを観察して、エースWRモスとウェルカーへの投球が少なく、また2人とのコンビネーションが微妙に狂っていると感じた。そこで第5週までのブレイディのターゲット別配球率(レシーバー別ターゲット率)とそれぞれの成功率を調べてみた。(添付表を参照下さい)
 左膝の負傷上がりで、左足への体重移動が微妙に浅く、コントロールの微調整が出来ていないとのNFLコーチの指摘もあったが、それを反映したのか、強く速い(回転の多い)ボールが必要な2人のWRへのパスが少なく、成功率も低かった。(2〜4週はウォーカー負傷欠、エデルンマンが先発出場)。
 雪のボストンにタイタンズを迎えた第6週は、フィールド表面が滑りやすく選手の動きが鈍いのを反映したのだろう、守備ラッシュもルーズで余裕を持ってコントロールした投球が多く、ほぼ昨年並みとも思われるターゲット別配球率、成功率となった。やはり、エースレシーバー3人には最低66%ぐらいの配球が必要と推測出来る、大いに気候に後押しされた記録向上だが、不振から脱するきっかけにはなるいだろう。魅惑困惑・わくわくの秋は続く。


 
 
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