40ヤード

2009年NFLコンバイン

Football galvanizer
Sadao Goto
(TOUCHDOWN PRO2009年3月発売号より転載)

注目の40ヤードダッシュ
 4月のNFLドラフトの対象となる、大学選手の能力を測定するスカウティング・コンバインが2月21日〜24日、インディアナポリスのルーカスオイルスタジアムで開催された。
 注目は、コンバインのハイライトである40ヤード走、とくにQB、WR、RBなどスキルポジションの計測が行われた、22日には全米から約700人のメディアが詰め掛けた。
 フットボールの能力評価では図抜けた知名度を持つ40ヤードだが、コンバインでの測定種目はこれだけではない。身体能力関連でも、225ポンド・ベンチプレス、垂直跳び、立幅跳び、ショート(20ヤード)シャトルラン、60ヤードシャトルラン、3コーンドリルなどがある。

何故40ヤードか
 しかし、メディアやマニアの関心は、やっぱり40ヤードである。NFLの特徴の一つであるスピードを、誰にもわかりやすく数字にするからだろう。
 なぜ40ヤードの距離で選手の走力を測定するようになったのか、明確な正解を出してくれる人はいない。良く知られているのは、スクリメージラインからパントの落下点までの距離が約40ヤードで、カバーに向かう選手たちがフィールドで最も長く走る距離を対象にした、とする説だ。姑息な解釈では、フィールド半面で測定できる最も長い距離というのもある。反対側のフィールド半面は、他の測定に使用できるという実務的な利点からの定着とする説で、フットボール初期の有力校であるハーバード大のコンクリート製スタジアムが拡大改修出来なかった為アメフットのフィールドが100ヤード(または120ヤード)になったとする説と共通する説得力がある。
 
40を走らなかったフィッツ
 第43回スーパーボウル第4Q、ぶっちぎりで56ヤードの独走をみせたカーディナルスのWRラリー・フィッツジェラルドは、文句なく現在のNFL最速のWRとしての評価がある。04年ドラフトの第1巡3位で指名されているが、彼はその2ヶ月前のスカウティング・コンバインで40ヤードを走っていない。
 実測記録なしで高位指名したカーディナルスの慧眼をほめるより、陸上トラックと同じ直線コースでの記録がそのままフットボールでのスピードに通じるか疑問に感じるマニアも多いだろう。
 歴代最速のDBといわれ、陸上競技出身で、NFLとメジャーリーグ野球を掛け持ちした、天才ディオン・サンダースは、そのとおりと即答した。「ジェリー・ライスやフィッジェラルドはクロック・スピードではなく、フットボール・スピードがある。一方、コンバインで最速の記録を出した選手のほとんどが優秀なフットボール選手になっていない」。
 事実、昨年までのコンバイン40ヤードのトップ6のうち2人が初年度にカット、2人が初年度でIR入りとなっている。

なんとか40記録を上げたい
 しかし、フットボールで確たる実績を残していない選手、テレビ中継などでプレー振りを知られていない選手にとっては、コンバインでの記録は大きなアピール材料となる。少しでも、良い記録を出したいと、コンバインに備えて陸上競技の指導者につき記録を伸ばした選手もいる。とくに、スタートダッシュがポイントだった。昨年のコンバインに参加したCBジャスティン・キング(ペン州立大、現ラムス)は、最初の10ヤードを平均1秒57で走っていたが、スタートを改良して1秒49まで上げ、40ヤードを4秒31という歴代2位を記録した。
 指導した元英国五輪コーチは、「基本的には、どのぐらいの力をどの角度で地面につたえられるか」がポイントになるという。脚のすねと地面が適切な角度なら、理想的な歩幅とピッチが可能になるというが、フットボールのスタンスとは大分相違がある。スタートだけでなく、ストライドあるいは腕の振りでも中間地点の速度をあげることが可能だ。通常40ヤードは21または22歩だが、ストライドを拡げて17歩にして記録をあげた選手もいる。
 しかし、陸上短距離走のテクニックを導入して好記録を出しても、それがNFLでの活躍に結びつかないのは紹介したとおり。それでも選手にとってはわらをもすがる気持ちなのだろう。

09年度40ヤードは4秒30
 コンバインの40ヤード史上最速記録は、昨08年にRBクリス・ジョンソン(東キャロライナ大)だした4秒25、彼はタイタンズに指名され、快足で1228ヤードを走り躍進の象徴となった。
 今年の最速はダリウス・ヘイワードベイ(メリーランド大WR)で記録は史上2位となる4秒30。
 今年のコンバインで40ヤードを走ったのは79人。ポジション別の人数と最速記録は、QB9人(4秒55)、RB11人(4秒45)、WR10人(4秒30)、TE8人(4秒50)、OL11人(4秒89)、DL10人(4秒64)、LB10人(4秒56)、CB5人(4秒46)、SF5人(4秒41)。話題のQBマシュー・スタッフォード(ジョージア大)は4秒81だった。

40ヤードの採点
 40ヤードを何秒で走るかを測定するだけではない。10、20、30、40ヤードの4地点で時間を計測している。
 とくに、RB、WR、CB、SFは40ヤードと共に、中間地点でのスプリットをも重視している。以前にも紹介したが、最初の10ヤードはスタートの爆発力と最初の加速力を判断出来る。20ヤードまでのスプリットはフルスピードへの加速、30ヤードはさらに加速出来るか減速しないか。そして、40ヤードは、総合的なスピードと共に、プレーの最中に加速する能力を測定できる。とくにWRとTEでは加速を重視する。マンツゥーマンでタイトにカバーされても、10〜15ヤードから加速してセパレートしてディープに走ることが出来るか。
 コンバインの40ヤードに欠場する選手が多いのはOLそしてDL。今年トップ3指名と見られているOTのジェーソン・スミス(ベイラー大)、NTのB・J・ラジ(ボストンカレッジ)は揃ってパスした。イーグルスが1巡指名すると見られるOTマイケル・オファー(ミシシッピ大)は「僕はたぶん生涯40ヤードを全力疾走する機会はないと思う」。攻守のラインは最初の爆発力を測定する10ヤードタイムしか問題にされない。

40ヤードを重視するチーム
 五輪短距離で4回金メダルを獲得したマイケル・ジャクソンが、NFLトップWRと短距離走者と40ヤードを走れば、どちらが速いかと問われて、「やっぱり、15歳ぐらいからスタートダッシュを練習している陸上選手だね」。通常100メートルのスプリンターが最高速度に達するのは50から55メートル、だから40ヤード(約36メートル)では、全力の95%ぐらいしか出せないそうだ。
 ドラフト直前のコンバインの、身体能力測定の記録をどう利用するか、チームで様々である。NFL人事関係者によれば40ヤードの記録を重視、つまり選手の運動能力を重視する傾向があるのはレイダースそしてコルツという。逆に40ヤードをほとんど参考にしないのはペイトリオッツ、ドルフィンズ、カウボーイズだそうである。納得できる情報である。

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