An effect of spread offense

ブッシュORピーターソンの明暗

Football galvanizer
Sadao Goto
(TOUCHDOWN PRO2008年4月発売号より転載)

スプレッドオフェンスの不安
  今年のドラフトのトップ5にスキルポジションは入らないのではないか。1位指名のドルフィンズはDTクリス・ロング(ヴァジニア)、2位ラムズはOTジェイク・ロング(ミシガン)、3位ファルコンズはDTドーシー(LSU)、4位レイダースはOTクレイディ(ボイズ州立)、5位チーフスはDEゴールストン(オハイオ州立)のドラフトが予想される。スキルで出てくるのは、このあとランナーを探す6位ジェッツが、マクファデンかフレックス・ジョーンズか、アーカンソー大RBのどちらか指名するのが最初だろう。今年は、それなりに優秀なバックが揃ったといわれるが、トップに上がってこないのは何故だろう。複合的な理由があるだろうが、その中で一番興味深いのは、大学フットボールに普及するスプレッド攻撃の影響である。

 フロリダ大やミシガン大を筆頭に、カレッジで浸透したスプレッドオフェンスだが、NFLではほんの一部での導入しかない。
 スプレッドで育ったRBがNFLで通用するのか、スカウト達はその評価に頭をひねっている。
 ペイトリオッツの人事担当のピオリは、
 「スプレッド攻撃のRBは、常に広いスペースの中で走っているので、NFLで通用するのか評価するのが難しい」。カレッジでラン&シュート攻撃が流行した時のWRの評価に通じる難しさだという。スプレッドはフィールドの横幅を十二分に使用するが、NFLではフィールドを垂直に利用する攻撃が多い。NFLでは、バックはQBの後方8ヤードに位置して、ハンドオフを受けたら、どこに行くべきは素早く決定して、全速力で穴をヒットする。しかし、スプレッドオフェンスのバックはQBの隣に位置し、QBの前方を横切って走ることも少なくない。バックはスクリメージラインの端に向かってカットすることが多く、そこは中央に比べ選手が少ない。あるいは、より広いスペースのアウトサイドにバウンスアウト(弾んで外に出る)することもある。インサイドハンドオフと比較すれば、バックには力強い突進力は必要ない。

 しかし、NFLでは、スプレッドよりクイックネスとインサイドラン能力がより要求される。
 スプレッドでは有効でもNFLで通用するのだろうか。「彼らはQBに向かって内側に急カット出来るのだろうか。守備ラインの中を突進出来るのか」。
 スプレッドのバックは、オープンフィールドで快足を飛ばし、パスを受けることには優れているが、第3ダウン1ヤードで、進まねばならないインチの距離を獲得できるのだろうか。ピオリは悩むのである。
 ブロック能力にも疑問符が付く。カレッジのLBは、パスカバレッジを重点にした軽量選手が多い。カレッジではLBブリッツを上手く拾えたRBでも、重くて頑強なNFLのLBを相手にきちんとブロック出来るのか、不安を感じるのは当然だろう。
 昨年、オクラホマ大からヴァイキングスに入り、豪快なランで大ブレークしたRBエードリアン・ピーターソンは成功例だ。ファンには悪いが、2年目に失速したセインツのレジー・ブッシュは、プロスタイルへの移行に失敗した悪しき例だろう。NFLと異なったスキームを追求するカレッジから、能力を正しく評価して、適材を獲得するのは、難しい。ちなみに、マクファデンはピーターソンとほぼ同じサイズである。

ドラフト振り返り

 NFLカレッジドラフトは、下位チームから選手を指名するウエーバー制を厳守している。基本となる思考は平等、別の角度から言えば機会均等。弱小チームに優秀タレントを獲得する機会を与え、すべてのチームに公平にタレントをばら撒き、実力を均衡させて伯仲した好試合を実現することにある。リーグの繁栄なくしてチームの繁栄なし、とする考えである。選手の意向は反映されないが、文化としてのプロフットを支える、産業としての基盤を認め、米国独禁法もNFL、ML、NBAには目をつぶっているようだ。
 150万人といわれる米国フットボール界の頂点、NFLへの最大かつ最高の入り口であるから、関心が高く、いくつもの国民的な出来事といわれる悲劇喜劇が起こって来た。NFLで、過去40年間のドラフトでの記憶に残る出来事を要約したコラムを見つけたので、要約、補足しながら紹介しよう。
 

1970年 数年後黄金時代を迎えるスティーラースは、この年、2人の殿堂入り選手を指名した。QBテリー・ブラッドショーとCBメル・ブラントである。
1971年 トップ3指名をQBで独占したのは、NFL史上初。1位がプランケット(NE)、2位がマニング(NO)、3位がパストリーニ(HOU)。
      マニングは兄弟の父親であるアーチーである。
1972年 レイダースが史上初となるパンター(レイ・ガイ)の第1R(巡)指名。
1975年 ロースボウルなどの活躍で人気があったUSCのQBヘイドンが、予想外の第7Rへと落ち込んだ。
1977年 トップ5指名のうちUSC勢3人、リッキー・ベル、パウエル、ジター。
1979年 QBモンタナと組んだザキャッチで知られるWRクラーク(SF)が10R指名。
1982年 NFL史上最多得点のKアンダーセンが4R指名。
1983年 QBの当り年、DENのエルウエー、MIAのマリーノ、BUFのケリーが指名された。6プロボウル出場のLBメクレンバーグは6Rでブロンコス入り。
1984年 アーヴィン・フライヤーがWRとしては史上3人目のトップ指名。
1985年 ハイズマン杯のQBフルーティーが、その短身ゆえに、11R指名。直後にCHIに移動した。
1986年 クイーンカレッジのシャッドがNFL史上初で唯一のカナダからの指名を受けた。
1987年 1年間TB指名を蹴っていたボー・ジャクソンが、7Rでレイダースに入団。
1988年 CINがイッキー・ウッズを指名、その年大活躍したが、負傷で花咲かず引退。
1989年 トップ5指名を受けた選手は、マンダリッチ以外はプロボウル出場を果たした。
1990年 DALがRBウォーカーを出し、エミット・スミスを獲得。
1991年 ファーブが33位指名。
1992年 INDが58年以降初となる、1位と2位の連続指名。
1993年 史上唯一である、8Rまでの指名を実施。
      8位指名からプロボウル出場したのは、QBグリーン、QBガーバック、WRトロイ・ブラウン、LBアムステッド、Sビショップ、Pヘンドリッチ。
     QBブレッドソーがワシントン州大初の1位指名をうける。
1995年 新加盟したJAXが2位指名でボセリを獲得。
1996年 WRの当り年。8人がプロボウル出場を果たした。
1997年 OTが1Rの最初(ペース)と最後(ヴァーバ)に指名された。
1998年 湾岸戦争で戦士したティルマンが全体226位でARI入り。
1999年 NOが残った全ての指名権をWASに譲り、全体で5位のリッキー・ウイリアムスを指名。
2000年 ジェッツが史上最多となる4つの1R指名権でDEエリス、LBエイブラハム、QBぺニントン、TEベクトを獲得。
      3人のQBが6Rで指名されたのは史上初、ブレイディ、バルジャー、ウインといずれも活躍した。
2001年 オレゴン州大のWR、チャド・ジョンソン、ハッシュマンザードの2人共CINがドラフトした。
2002年 新加盟のHOUが大学ドラフト史上最多の13人の指名を行った。現在僅か3人しか残っていない。
2004年 マイアミ大(フロリダ)が史上最多6人の1R指名を受けた。
      FSテイラー、TEウインスロー、MLBヴィルマ、OLBウイリアムズ、Tカーレイ、NTウイルフォーク。
2005年 23連続パス成功などの大学記録で1位指名が予想されたQBエーロン・ウイリアムスが、24位でGBにドラフトされた。
      一番人気の最長待機時間といわれる。
2006年 1990年以降、初めてトップ20位以内でWRが指名なし。


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