全勝優勝

19−0
Perfect ― Redemption

Football galvanizer
Sadao Goto
(TOUCHDOWN PRO2008年1月発売号より転載)

 史上初のパーフェクトシーズン、19戦全勝をめざすニューイングランド・ペイトリオッツ(AFC東地区)の最終戦の相手は、奇跡的な復活を果たしたニューヨーク・ジャイアンツ(NFC東地区)となった。
 2月3日(日)、アリゾナ州グレンデールで開催される第42回スーパーボウルは、6度目の出場で4回目の優勝を目指すパッツ(ペイトリオッツの略称)と、4度目の出場で3回目のリーグ制覇を狙うジャイアンツの対戦となる。スーパーボウルでは初顔合わせ、しかし、今季のレギュラーシーズン最終戦で38対35の大接戦を演じた、その再戦とあって、米国東部の二大都市、ボストンとニューヨークのライバル意識もあって、スーパーボウルへの関心は大統領予備選を凌駕している。
 
 僅差の試合もあったが常に安定した戦いぶりで乗り切り、史上初のシーズン全勝を続けるパッツの原動力は、史上最多50TDパス記録を樹立したQBトム・ブレイディ(30歳)である。シーズン最多589得点のチーム記録も樹立して、名選手モンタナを超えた史上最高のQBと評価が定着した。戦術理論、強肩、投球技術、そして窮地での冷静な判断はもはや芸術的である。平均距離、成功率、TD率、被奪取率で評価するパッサー係数は、平均値のほぼ1・5倍である117.2と史上2位を記録した。とくに今季加入した、大器WRモスとのコンビは決定力抜群で、モスはシーズン最多TD23パスキャッチの記録を作った。
 距離が基準の戦力は、攻撃1位、守備4位と均衡がとれ、平均37得点もリーグ1位、 17失点も4位とまったく穴がない。過去6年で3回のスーパーボウル優勝に導いた名将ビル・ベルチックの原点は守備で、分析力を基本にディスガイズ(偽装)などの高度な攻撃的守備戦術を展開、勝負の分岐点を演出して、観客の興奮を増大している。ところが、今季第1週に相手ジェッツのコーチから禁止事項であるビデオ盗撮を告発され、リーグから多額な罰金などを課せられた(そのコーチ自身も2年前までパッツのコーチで、司法取引的な訴えだったと思われる)。過去の栄光は違反行為がもたらしたものという汚名を覆すために、パッツは勝ち続けることが義務となり、結束したチームは黙々と勝利を積み重ね、桧舞台に辿り着いた。全勝、それが名門に課せられた贖罪でもある。

 現代NFLの象徴ともいえる強豪に挑戦するのは、去年今年とぎりぎりでワールドカードに滑り込んだジャイアンツ。去年は初戦負けだったが、今年は驚異の驚愕(ジャイアンツサプライズ)と賞される大躍進で7年ぶりのスーパーボウル出場を果たし、17年ぶりの優勝を狙う。
 チーム本来の持ち味は、強力守備でボールを奪い堅実なラン攻撃で逃げ切る保守右派。今季も守備は7位、ラン攻撃は8位と安定はしていた。前半戦の貯金で10勝6敗と勝ち残ったが、再建の年とあって期待はなかった。ところが、そこから、劇的なリベンジロードが始まった。プレーオフ初戦でバッカニアーズを破ると、2回戦では今季2戦全敗したカウボーイズに逆転勝、雪中のNFC選手権では、13対35と完敗したパッカーズに35対32と延長逆転勝と、敵地で番狂わせを続け、トップにたどり着いた。
 今年の魅力は、要所でみせる集中力。エースRBバーバーが引退して序盤は連敗でスタートしたが、バーバーとコフリン・コーチの衝突によるチーム不和がなくなり、コフリンが選手の自主性を重んじる方針に変更したこともあって、チームワークが復活した。チームの核になったのが、終盤一気に成長した天才QBイーライ・マニング(27歳)である。不安定なパスで信頼を欠いていたが、じっくり待ったベテラン選手の期待に応え、最終戦のパッツで冷静な指揮をみせて、自信をつけた。35対38と敗れたが、チームにまとまった。この試合、イーライは118・6でブレイディの116・8をパッサー係数では上回っている。何時までもこのチームで試合をしたい、まるで高校野球を思わせる一体感が生まれた。パッツ戦ではイーライの喫した1回のインターセプトが敗因となったが、続くプレーオフ3試合ではインターセプトは零(通算係数99・1)、大男達がイーライの肩を抱きしめ、チームは階段を上がった。イーライとチームにとって、雪辱の仕上げは、あのパッツ戦しかないのである。イーライはご存知、コルツの名QBペイトン・マニングの弟、兄の夢をかなえる兄弟愛といった図式も覗き見ることが出来る。
 素顔はシャイなナイスガイだがスーパーモデルと生活するブレイディは今や米国で一番人気、一方のイーライは守ってあげたい好青年タイプ、米国のマスコミはこぞって2人を追いかけている。

 スーパーボウルの見所は多い。快足モスを序盤から生かせればパッツのスプレッドパス攻撃が優位になる。ジャイアンツがモスをダブルカバーするか、シングルでするかが重大な選択になる。第17週ではCBマディソンがシングルで対応して2TDを浴びた。俊敏なウエルカー、縦のストルワースの3人WRに加え、サードダウンRBのフォーク、TEワトソンも陰のエース。AFC選手権でフォークをWRに起用したが、次の試合では、復帰したWRブラウン、4人目WRギャフニーの起用もあるだろう。リードすればRBマロニーがボールコントロールする。
 サック数リーグ1位の53回のジャイアンツ守備はしつこくブレイディを追いたい。DEウメニオラ(13サック)、ストレイハン(9サック)に期待。とくにDTが中央部からプレスしてQBの踏み込みを妨害できれば、すでにプレーオフで5インターセプトを奪ったジィイアンツ守備の真価が期待できる。
 堅実なジャイアンツのラン攻撃は豪快なRBジェイコブス(193センチ、120キロ))が核になる。第17週に出場しなかった小柄なブラッドショーのスピードもパッツを驚かすだろう。ランが進めば、LB陣が上がり、イーライのプレーアクションパスが有効になってくる。プレーオフで16回194ヤードと好調なバレス(196センチ)、15回で196ヤードのトゥマー(191センチ)と長身WRが揃い、サイドライン際のパスの正確さも増した。負傷欠場のショッキーの穴を埋めた新人TEボス(201センチ)もレッドゾーンでは効果がある。
 前回対戦では、ジャイアンツ攻撃は僅か236ヤード、KRヒクソンの73ヤードキックリターンTDで、やっとパッツの346ヤードに並んだ。ブレイディは5サックで16ヤード、イーライは2サックで3ヤードを失った。反則は各5回、FGトライは5回と4回、 パッツは2回外して、ボールコントロール時間36分18秒を得点に反映出来なかった。

 第42回アリゾナスーパーボウルで期待するのは、ペイトリオッツ34対30ジャイアンツといった伯仲の展開である。ジャイアンツの健闘も期待するが、19戦全勝の場に立ち会いたい気持ちも強い。

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