ベルチックの叛乱!?

NFLコーチのパラノイア症候群

Football galvanizer
Sadao Goto
(TOUCHDOWN PRO2007年9月発売号より転載)

パッツの裏切り!?
 1年前の、2006年9月6日NFLのR・アンダーソン副社長は『スタジアムのすべての場所から、相手コーチのシグナルをビデオテープすることを禁じる』ことを強調した文書を全コーチに送った。今年の9月9日(日)、開幕戦でジェッツを34対7で下したニューイングランド・ペイトリオッツ(AFC東)のビル・ベルチック・ヘッドコーチは上記の方針を犯したとして、リーグより50万ドルの罰金が課せられた。試合中に相手守備コーチのシグナルをビデオ撮影しているパッツ職員がリーグ関係者に拘束されからだ。加えて、チームに25万ドル罰金と08年度ドラフト1巡指名権(今季チームがプレーオフ出場を逸した場合は第2、第3ラウンド指名権)の剥奪を課した。昨年就任した、ロジャー・グッデル・コミッショナーからの不正に関する強力なメッセージである。
 ベルチックは否定せず、制裁を受け入れた。ペイトリオッツはリーグ当局と極めて近い、保守本流のクラブの1つである。今回の処分は、芝居とまではいわないが、リーグ方針が乱れた現状に警告を発する意味合いも大きかったと推定している。
 じつは、解釈や統制が難しく、コンセンサスが得にくいこの問題はNFL競技委員会でも永年の課題だった。この春、オーナー会議でその対策が提案されたが、わずか2票差で否決されている。提案内容は、守備コーチのハンドシグナル自体をなくすために、攻撃のQBとコーチのコミュニケーションと同様に、フィールドの守備選手とサイドラインのコーチを無線で結ぶヘルメット・ラジオ・コミュニケーションを認めようとするものだった。
 相手の戦術情報の収集は、勝利を競うコーチには欠かせないもので、元テキサンズGMのキャサリーは公開されていない情報収集策として、守備ラインのヘルメットに超小型マイクロフォンを埋め込む技術を公表した。QBのシグナルを録音するための装置で、試合後に試合ビデオテープとマッチさせて、QBのオーディブルをつかみ、次の試合に生かすという。
 こんなシビアな展開に、NFLのコーチは全員がパラノイア(偏執症、病的な疑り深さ)だとマスコミは皮肉たっぷりな情報を連日報道している。シーホークスのコーチであるホルムグレンは、試合中にサイドラインでヘッドセットをつけプレーをQBに送っているが、数年前からプレーコール・シートで口元を隠すようになった。前のコーチと一緒に自チームのゲームフィルムを見ていた時、そのコーチがホルムグレンの唇の動きを見て全プレーをあてたからだ。「私自身のプレーコールだけじゃない。サイドラインのアンディー・リードとかグルーデンの口元を見ていると私でさえそのプレーを当てることが出来るんだ」。
 パラノイアもムリはない。

まさかの、テキサンズ
 2週を終了して連勝は10チーム。パッツ、コルツ(AFC南)、ブロンコス(AFC西)、カウボーイズ(NFC東)、49ナース(NFC西)実力通り。スティラース(AFC北)、パッカーズ(NFC北)は伝統クラブの底力と納得しても、テキサンズ(AFC南)、レッドスキンズ(NFC東)、ライオンズ(NFC北)は、まさか来るとは思わなかったとの評が多い。
 ヒューストン・テキサンズは、昨年の第15週にコルツを破って以来4連勝。NFL加入以来のカーを放出、ファルコンズの控えだったシュワブをスタートQBに迎えたのが成功した。2試合で成功率72%。昨年は試合平均2・7回だった被サックはいまだ零(カーは5年間で249回サックされた)。パッサー・レーティング111・4でリーグ5位である。
 昨年就任したNFL最年少、37歳のGMであるリック・スミスがシュワブに能力を見抜いた。Gウェアリーは「僅か2試合なのにシュワブはどうやってチームを上手くリードするのか、よく聞かれるが、彼は虎の目の持ち、ハドルでの彼の目を見れば、すべてが伝わってくる」。2年目のヘッドコーチ、ゲリー・キュービアックへの選手の信頼も大きい。練習後に選手全員に練習の内容を評価して伝える、そのオープンなやり方が選手の心を掴んだ。
 昨年ドラフトで1番指名権を持ち持ちながら、RBブッシュ(現セインツ)、QBヤング(現タイタンズ)を飛ばしてDEマリオ・ウイリアムズを獲得して、周囲をあきれさせが、そのウイリアムズは今季開幕戦で2サック、1ファンブルリターンTDを上げ、20対3でチーフスを下し原動力となった。また今年の1巡で指名した20歳のDTアモビ・オコイエは先週2サックを記録した。スミスは、「この2人はずっとテキサンズで一緒に活躍していく」と想定内の笑顔だった。このテキサンズ第3週にコルツと対戦する。この号が出る頃には、その結果も出ているはずだ。
 デトロイト・ライオンズは、パス攻撃の名手OCマーク・マーツがパッシング攻撃を大改造中だ。昨年はパス攻撃はリーグ7位へ、今年は現在リーグトップ。QBキトナは気持ちよさそうに投げ分けている。ドラフト1位のWRカルビン・ジョンソン(131ヤード)、新加入のWRショーン・マクドナルド(161ヤード)がR・ウイリアムスに厚みを加えた。さらに、守備の攻撃性が増した。テイクアウエー8(インターセプト6、ファンブルリカバー2)はリーグ1位。
 ヘッドコーチのマリネリは{誰かがあとを追うようになって初めてリーダーといえる。そんな選手が出るか出ないかで、このリーグの勝者が決まる}。
 なお、期待はずれの項で紹介すべきだが、サンフランシスコ・フォーティナイナースの攻撃は失望。守備が2試合で僅か3TDしか許さず、1試合当り16・5点。昨年の平均は25・8点だった。
 
 SBの候補としてあげたフィラデルフィア・イーグルス(NFC東)が2戦全敗と大ピンチである。しかし、2試合続けて、アンディ・リード・コーチの持ち味である効率的な攻撃がまったく出来ていない。第2週レッドスキンズ戦ではKエイカースの4FGだけに終わった。リードは「このリーグではFGだけでしか得点出来なかったら、勝つことはムリだ」とため息をついた。

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