スカウティングコンバイン

Football galvanizer
Sadao Goto
(TOUCHDOWN PRO2007年2月発売号より転載)

豪雨のマイアミから、快晴のホノルル、そして、王者インディアナポリスの本拠RCAドームと舞台は移り、早くも2007年シーズン幕開けのドラマがスタートする。
  2月22日から7日間、リーグ主催の「NFLスカウティングコンバイン」が開催される。今年NFL入りを希望する選手を対象として、オンフィールドドリル、医療テスト、筆記テスト、チームスタッフとメディアによるインタビュー(質疑応答)を行う。試合での実技に加え、選手の能力を客観的に評価出来る、チームにとって貴重な機会で、選手からも自慢の能力をアピールする絶好の機会となる。NFL関係者はもちろん、全米の大学フットボール関係者、マニアが注目する1週間である。
  今年の注目を集めているのは、1番指名のレイダースが関心を持つQBジャマーカス・ラッセル(LSU)、2番指名のライオンズが狙うOTジョー・トーマス(ウィスコンシン)、続くブラウンズがピックするだろうRBエイドリアン・ピーターソンなどだが、彼らの真価はどうだろう。とくに、前シーズンに負傷して、実技を確認する機会が少なかったピーターソンなどは、その回復具合も含めて、スカウト達は目を凝らすことになる。

 選手の能力評価については、プロスポーツ界随一のシステムといわれるNFLだが、『コンバイン』ではなにをどう評価するかはチーム関係者でなくても気になるところだろう。知られたところでは、40ヤードダッシュ、そしてベンチプレスのレップ(反復動作)があり、マニアの必須アイテムになっている。もちろんこれらは希望者の肉体的な状態の最も明白な結果の一つだが、他の測定やドリルも、選手の総合的な価値判断には同じように重要であるの。しかし、その評価基準となると、頭を傾げる人が多いはず。そこで、コンバインでの一般的な測定種目でそのいくつかをあげてみよう。蛇頭ながら(こんな言葉ないが)、キッカーとパンターは40ヤードダッシュしか行わない幸運なポジションであることを紹介しておこう。

1、40ヤードダッシュ
  全選手が40ヤードを走り、所要時間を測定するが、その重要性はポジションによって異なっている。たとえば、RB、WR、TE、DBに関しては、チームは40ヤードの各パートに分け、深い関心を払っている。
  スカウトはまず、ボールから飛び出す最初の爆発力といかに早くフルスピードに加速するかを示す10ヤードのスプリットタイムに注目する。20ヤードのスプリットタイムは、選手が最初の加速を終えたあとにもスピードをあげることが出来るか、それともそれまでのスピードかの判断の材料となる。
  40ヤードのタイムは、総合的なスピードを明確に示すと共に、ランニングの最中に加速する能力を測定できる。とくにWRとTEでは後者の記録を重視する。選手がマンツーマンでタイトカバーされた時に、10から15ヤードから加速して、セパレーションのステップを踏み、ディープパスを追うことが出来るだろうか。それを判断する。
  WRはもちろんこのテストで最も注目を浴びるポジションであり、CBも同じ基準なのだが、2回のトライで彼らが4・7秒を切らないと、まずドラフトの対象とはならない。
 
  攻守のラインは最初の爆発力を測定する10ヤードタイムしか問題にされない。攻撃ラインが10ヤード以上を走るのは稀で、せいぜいプルして、アウトサイドランのブロックする時ぐらいだろう。

2、ワンダーリックテスト
  コンバインに参加した選手は、あまり知られていないが、ペーパーテストであるワンダーリックテストを受けることになる。読み、理解、判断の能力を測定する50問の試験である。選手は12分間で出来るだけの質問に解答して、その結果が、回答数と正解数で評価される。ワンダーリックテストは知性の総合的な判断に用いられるわけではなく、むしろ、より入念にインタビューを行うべきことを示したり、NFLのスキームを学ぶためのメンタルな側面をハンドルする時に、黒板でどれだけの時間をかけるべきかなどをチームに教えてくれるはずだ。

3、腕の長さ
すべてのポジションに必要ではないが、幾つかのポジションでは重大な判断基準となるのが、アームレングスである。攻守ライン(とくに攻撃タックル)では、相手ラインにホールドされる前に、相手をホールドするための長い腕を持つ選手が有利となる。また、ブロッキングあるいはブロックを避ける機会の多いTEやLBでもアームレングスは重視される。攻撃タックルでは33インチ(83・82センチ)が理想とされるが、それ以下の選手はガードにコンバートされる可能性もある。

4、ハンドサイズ
  チームは試合で活躍するボールキャリアがどれだけ大きな手をしているかにも関心を払っている。理想的なのは、QBは10インチ(25・4cm)に近いかそれ以上の手であるべきで、RB、TE、WRは9インチ(22・86cm)は必要だろう。パスキャチャーにとって8インチまたはそれ以下の手は能力的に難しいという基準になっているようだ。

5、20ヤードシャトルラン
  ショートシャトルランともいう。5ヤード離して引かれた3本ラインの中央からスタートして、左右両側のラインにしゃがんでさわって戻る20ヤードラン。
  ショートシャトルランは選手の敏捷性、バランス、ヒップフレキシビリティ(骨盤付近の柔軟性)の評価に適している。40ヤードダッシュではいい記録を出すがシャトルランでは遅い選手は、ヒップがタイト過ぎる場合が多い。

6、60ヤードシャトルラン
  基本的には、バスケットボールでコートを往復するスーサイドドリルと似ている。フィールドの中央ラインから5ヤード、10ヤード、15ヤード離れたラインに走り、ラインにタッチして戻る。鋭く方向変更することが必要で、QBや攻守ラインをこのロングシャトルランは必要ではない。

7、3コーンドリル
  このドリルは、3つのコーンを互いに5ヤード離してL字型に位置させるのでLドリルとも呼ばれる。このドリルも選手の敏捷性、バランスを測定するが、とくに選手がフルスピードに近い動きの中で身体をコントロールして、シャープな方向変更(ターン)をする能力があるかを判断できる。選手はよくここで失敗するが、同じ手を使用しなかったり、途中でコーンを飛ばす失敗が場合が多い。

8、垂直跳び、幅跳び
  垂直跳びは、生来の爆発力を反映する数字として、多くの評価者から重視されている。チームがとくに注意を払うのはRB、LB、DBたち。幅跳びは垂直跳びほど爆発力の測定に向かないとされるが、選手のバランスとフレキシビリティの判断には有効である。

9、225ポンド・ベンチプレス
  多くのレシーバーが彼らの力を誇示しよとやりたがるが、WRとQBにこのドリルを要求されない。このテストは真の力を示すものではないが、受験選手の総合的な力とウエイトトレーニングへの関心の高さを反映する。攻守ラインで20回以上出来ない場合は、チームからは相手にされない。

10、パスラッシュ・スピードドリル
  DLとLBを対象にしたドリル。ダミーを回ってラッシュ、ボールに達する時間を計るか、またはいかに早く実際のQBにタッチできるかを計測する。守備選手の最初の爆発力を見る機会であり、ゲットオフタイムとパスラッシュテクニックを他の選手と比較する機会でもある。


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