GIVE US YOUR SMILE.
ダンジーに笑顔を

祝!SB初出場

Football galvanizer
Sadao Goto
(TOUCHDOWN PRO2007年1月31日発売号より転載)

7年前のセントルイス
 最近の私の興味の原点となっているのは、7年前の、2000年1月23日のNFCチャンピオンシップだ。
 守備のバッカニアーズがセントルイスに乗り込んで、当時日の出の勢いだったラムズのパス攻撃と対決した。トランスワールドドームは耳が痛くなる大歓声で溢れ、隣の実況アナウンサーの声すら聞こえなかった。疑惑の判定が一つあり、それが勝敗に響き、11対6でラムズが勝った。ラムズはスーパーボウルに進み、タイタンズを破り優勝した。
 私は敗れたバッカニアーズ守備の切れ味に涙が出るほど心を打たれた。まさに、カバー2守備がNFLのひのき舞台の飛び出した、歴史的な試合だった。トニー・ダンジーがヘッドコーチ、モンテ・キフィンが守備コーディネーター、そして実践の指揮をとったLBコーチがラヴィー・スミスだった。ダンジーはいつもように表情を変えずにフィールドを去った。

 コルツのヘッドになったダンジーが、アメリカンボウルで来日した05年夏に、どうしてもあの時の感触を思い出したくて、声をかけてみた。練習後のサイドラインで「今までで、最も印象に残った試合は」と問いかけると、彼はちょっと考えてサンディエゴの試合と答えた。前年度、オーバータイムで大逆転していた。それではセントルイス戦はと粘った再度問いかけると、頭をかしげて私の顔を見返してきた。気を利かせた隣の米人記者が、5年前のゲームだとダンジーに囁くと、めずらしくかすかに苦笑して「あれはずいぶん昔だ」と答えて、話は終わった。それだけの話だが、彼の別れの握手が妙に強く感じられた。

第41回スーパーボウル
 7年前に師弟関係にあったダンジーとスミスが、2月4日の第41回スーパーボウルで、共に黒人監督としては初のスーパーボウル出場を果たし対決する。出場を決めて、あの冷静なダンジーが両手を空に突き上げた。大きい思い入れは別の機会にして、見所を急ぎまとめておこう。

 ダンジーがコーチするイアンディアナポリス・コルツ(AFC)は天才QBペイトン・マニングの率いる攻撃が、スミスが率いるシカゴ・ベアース(NFC)はMLBブライアン・アーラッカーが核となる激しい守備が主力である。
 コルツが攻撃、シカゴが守備の最も関心の高いマッチアップに絞ろう。しかし、勝敗を左右するのは、これ以外の2つの局面であることも推測は出来る。

ランニングゲーム
 コルツはグランドゲームをQBマニングのプレスナップのリードに基づいて展開する。ボックス(攻撃ラインに直面した長方形の守備ゾーン)に7人しか守備選手がいなければ、彼はランをオーディブルするだろう。もし8人守備がいればパスをコールする。コルツは第1、第2ダウンには、爆発力を持つ新人RBアダイをオープンフィールドに走らせ、第3ダウン・ショートまたはゴールライン直前ではパワーのあるローズを起用して中央に走らせることが多い。
 コルツがラン・モードに入ると2タイトエンド・セットをとることが多い、しかし、スプレッド体型からノーハドルでランを展開することも少なくない。AFC選手権ではペイトリオッツ相手にOTからOTの中央部を走らせて成功した。主力DTハリスを負傷で欠き万全でないベアーズ軽量フロントを圧倒できると感じているかもしれない。
  一方ベアーズ守備は、セインツ戦で成功したように、フロントセブン(7人)だけでランを防げると感じているかもしれない。それが可能なら、得意な2ディープカバレッジが可能になり、コルツのレシーバーをセフティの前方に封じ込めることが可能になる。しかし、コルツは多彩な体型やセットをミックスして攻撃目地点を偽装して、MLBアーラッカーにリード&リアクト(つまり判断の遅れ)を強いる戦術をとるだろう。

パッシング・ゲーム
 ハリソンとウエインのWRコンビの高い実力は誰もが認めている。しかし、プレーオフ3試合では、コルツはバックとTEに合計42回のパスを成功させている。相手がセフティをトップに残してパレスカバレッジをとった場合には、マニングは容易にフィールド中央がワイドオープンであることを発見してパスを通していた。
 コルツはクラークとユーテクをスロットバックに入れた2TEセットを使用するだろう。クラークはウエインのサイド、ユーテクはハリソンのサイドに位置する。4つのルートを利用して守備セフティに誰をカバーするかを判断させ、オープンになった選手にパスを通す判断と技術がマニングにはある。
 シカゴのパスラッシュはハリスの欠場で威力を大幅に減少した。しかし、シカゴはブリッツを多用しないだろう。運動能力の高いLBたちはパスカバレッジを担当する、ディープミドルを守るMLBアーラッカーの動きは出色である。アーラッカーはTEクラークをカバレッジに誘い込み、ゾーンのシーム(継ぎ目)を彼と併走するだけの能力は十分にある。SLBヒレンマイアーも並の運動能力であるユーテクをカバーする能力はありそうだ。そうなると、バックを守るのがWLBブリッグスになる。
 インディの勝利のために、ハリソンとウエインのWRコンビの活躍が必要だろう。

ブリッツ
  ブリッツをピックアップする理解力やパスブロック能力から、コルツのサードダウン・バックはローズになる。しかしシカゴはあまりブリッツをしないので、ローズはラッシュする守備Eをチップしてルートにリリースすることが可能になるが、そうなるとマニングはパスプレーで5つのオプションを持つことになり、ぐっと優位になる。一方、シカゴはフロント4、とくにDEブラウンとオガンライで十分のプレッシャーが与えられ、マニングに時間を与えないと信じているはずだ。

サードダウン
  ベアーズの積極フロント4を抑えられるかはスクリーンパスとドローが鍵となるだろう。ショットガン体型をとった場合は、シカゴのLB陣はパスを予想してカバレッジにドロップするので、攻撃バックにとっては走るルームを広く手に入れることになる。もしシカゴがランを強く意識した守備をするなら、コルツはプレーアクションをしてLBを引き付け、頭越しにローズへパスする戦術を展開する。ベアーズはLBに強い信頼を寄せており、オープンフィールドのバックへのパスも捕球後のタックルで対応できると読んでいるだろう。

レッドゾーン
  コルツはランを展開しない場合が多い。WRへのパスを好んで、たとえば、ハリソンはフェードまたはコーナーへのダブルムーブ、そしてウエインはポスト・コーナーに走る場合が多い。TEクラークはミドルへ走り、アーラッカーをパスカバレッジに引き込む。シカゴのCBはソフトなカバレッジでセフティからのヘルプをもらうことが多い。彼らはOLBと連係をとりクイックスラントとウンダーニースルートへの対応をハンドルする。

コルツの得意なプレー
 マニングとウエインが組んだパスプレーで、ミスをしない限り、守備することは難しい。
 ダウンとディスタンスで深さは違うが、一般的には15から20ヤードのパターンでサイドライン沿いに展開する。
 ウエインは「GO」(縦)ルートを走るように激しくCBに向かう。特別な快足ではないがディープパターンを巧みに走り、レギュラーシーズンにはビッグプレーを成功させて、平均15・2ヤードを稼いでいるウエイン。守備バックは抜かれることを警戒して大きく下がる。ウエインはダウンフィールドを向かって走り続けるが、マニングは彼のわずかに後、肩の後方にめがけてパスを投げると、ウエインはストップ、足を踏ん張って、回転して、ボールを捕球する。下がりすぎた守備は反応できない。プレー名は『アンダースロー』、ファーストダウンがどうしても欲しい時登場する、コルツのシグネチャー・プレーだ。

 その他の見所が多いが、時間がない。師弟対決は30対24、コルツの36年ぶりの優勝と予想するのはいつも冷静なダンジーの、底抜けの笑顔をもう一度みたいにからに過ぎない。

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