Merriman、WHO?
君はメリマンを見たか

Football galvanizer
Sadao Goto
(TOUCHDOWN PRO2006年10月31日発売号より転載)

 ショーン・メリマンの評価が急上昇、史上最強LBの声も上がってきた。桁違いのスピードと破壊力の原点は、執拗な怒りと冷酷な態度から生まれると、その私的な裏側を追う米国メディアも出てきた。好調サンディエゴ・チャージャーズ(AFC西)を支える若き怪物は、忘れかけていたプロの非情さを観客につきつける。

 文句なしの昨年の新人王、いくつかの最優秀守備選手の表彰も受けた。サック数10、出場を果たしたプロボウルにはギンギラの指輪に、派手な黄色ジャケットであらわれ、ワイキキでもひときわ目立った。193センチ、123キロの頑丈な筋肉。アーノルド・シュワルツネッガー並みの転進を予想するメディアも多かった。ソフトモカシンが似合う、メリーランド大学出身。
 しかし、その7ヶ月後、NFL2006年シーズンを迎えた彼はシュワを飛び越しターミネーターになったとそのメディアは目をむいた。
「名選手ローレンス・テイラーと同等の才能を持ち、しかも30ポンド大きなLBだ」 
 メディアは第12位で彼を指名したチャージャーズのショッテンハイマーの慧眼を讃えるが、それはカウボーイズと話がついていたと他のチーム遠慮した結果に過ぎない。カウボーイズが寸前にもう一人のLBウエア指名に変更して、サンディエゴに怪物が転がり込んだ。
  「彼と同じサイズで同じことが出来るLBを教えてもらいたい。大きく、しかもコーナーを回りきる機敏性がある」と嘆くのは毎年2回彼と対面する不運を嘆くチーフスのTEダンだ。本能、パスラッシュ能力、スピード、爆発力、そしてパワーいずれも群を抜く。特に、彼以上の爆発的な打撃を与える選手はNFLにはいないだろう。守備の権威として37年以上プロフットの世界で生きてきたショッテンハイマーも、メリマンと同等の爆発力を持つ選手はただ1人、絶好調時のLTとメディアの意見に賛成した。

 昨年夏キャンプ、チャージャーズのベテランFBニールはワンオンワン・パスラッシュ初練習で新人メリマンの相手、ブロック役をかってでた、しかし、一度もメリマンにコンタクト出来なかったそうだ。「強圧を意識していたら、速すぎた」(ニール)。メリマンは膝を深く曲げ、低姿勢で一気に股関節力で飛び出す。
 初体験の8歳から当りは強烈で、メリーランド州ダグラス高では、相手選手の負傷を恐れ、コンタクトドリルから彼を外した。高校時代の4人を含みアマ時代に9人の相手をノックアウトしている。

 今も彼の右腕に刺青となって残る「ライトアウト」(さっさとでていけ)伝説が始まったのも、この頃だ。ホームレスなど不遇だった幼少期の思い出を引きずってフィールドに登場したメリマンは激しいヒットでその屈折を晴らした。少年時代にバトカス、ランバード、シングレタリーがボールキャリアをパニシュする姿をビデオで見て、ラッシュの興奮を感じた。フィールドでの激しい行為だけが彼の怒りを完璧に解き放ててた。メリーランド大時代には同僚と喧嘩して病院送りにした悪行もある。しかし、最後には彼の努力が報われた。
  「彼の経験は無駄ではなかった」と語っているのは、ジャイアンツLBアーリントン。高校時代からの知人で、メリマンが兄と慕う存在だ。「今は、大人としてすべてをハンドル出来、彼自身や家族を恥じる必要がないことも理解している」。
 
  経験は彼をより賢くより激しくした。「私はすでに多くの経験を経て、私を壊せるものはなにもないと感じている」とメリマンは次のステップへの姿勢をとる。ショッテンハイマーは、彼より誇り高い選手は見たことがないと証言した。
  フィールド上の振る舞いで、最も選手としてのメリマンに似ているのは、レイブンズのLBレイ・ルイスだろう。「彼の持つオーラ、エネルギー、他人にも感染するような熱情、まさしくレイ・ルイスだ」(ニール)。
 偶然の表現ではない。実際に、ルイスは昔からメリマンの良き指導者である。毎週、電話またはメールで2人は連絡を取り合っているが、ほとんどの場合、いかにゲームの準備を行うかをルイスがメリマンに教え込んだ。「2人で話し合ったのは、ドミネーション。フィールドの支配に関する話題だけだった。どうしたら相手を支配できるか、フィジカルの問題ではない。リーグには速い、強い、高い、いろんな能力を持った選手がいるが、支配は選手の持つ精神力の問題だ」とメリマンは濃密な交流を語った。
 チームメイトが1000回出場したら、メリマンは1001回出場する。他の選手が500回プッシュアップしたら、メリマンは600回する、「彼らとの違いは、メリマンは決してあきらめないことだ」と同僚のニールが証言した。「多くの選手が彼を潰そうとしたが、潰れたのは彼らだった。彼は絶対に止められない」。昨夏キャンプで鼻を骨折したが、コトンを詰めて、すぐに現場に復帰した。

 ルイスのように、メリマンは生まれながらリーダーである。サンディエゴにはRBトムリンソン、TEゲイツなどのスター選手も多いが、「メリマンはチームで最も声の大きなリーダー」(LBフリップス)である。彼はテスト入団選手のような厳しい練習規律で選手の尊敬を集めている。メリマンを火を吐くように荒い呼吸をするペイトン・マニングと証言する関係者もいた。「彼は間違いなくチームで一番厳しい練習を一番長くする」(Sマクリー)。ウエイトトレーニングは彼にとって義務でなく、楽しみである。(高校時代、アルバイト先から給料の代わりに古いウエイトセットをしてもらって、午前3時までトレーニングしていたとの逸話もある)。
 オフには週3回タイ式ボクシングジムに通い、週に20時間のフィルムスタディを欠かさない。自宅には専用のフィルムルームすらある。

 「自分出来ることにリミットはつけたくない」。2年目のメリマン、どこまで大きくなるのだろう。見守る価値は十分にある。

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おまけのコラム
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NFL序盤戦
サプライズ・ベスト5

第1位、セインツが首位
 若いシーン・ペイトンをヘッドコーチに迎えたセインツが5勝1敗でNFC南首位で頑張る。昨年カトリーナ台風で本拠スーパードームを失い、モラルダウンの追い討ちをかけ最下位。QBブリーズと契約、マルチRBブッシュを指名して、攻撃が向上。しかし最大の驚きは守備の成長、とくにLB陣は強い。

第2位、ドルフィンズ海底に潜水
 昨季最終6連勝は今季プレーオフ間違いなしの予想が多かったが、早くも5敗。セイバンコーチは守備は立て直したが、親友ベルチックほどの勝負勘はなかった。鳴り物入りのQBカルパッパーは期待外れ、ラッシュに威力なし。

第3位、ベアーズ圧倒、しかも攻守
 躍進の昨年からさらに威力を増した守備、相手が辟易するようなフロント7、さらに評価が高いセカンダリー。攻撃でも、ついに積極性が向上、健康なQBグロスマンの好調な指揮で、プレーブックをオープンアップすることに成功して、全勝。

第4位、ラムズ緊急発進、しかもエアマーツ抜き
 ターフ上の豪華ショーと呼ばれた圧倒的な攻撃を、バランスの良い攻撃権が維持できる戦法に進化させた。ランに加えレシーブを向上させたエースRBジャクソンは攻撃を安定させ、ひどかった守備は依然成績は今一歩だが、要所でビッグプレーが可能になった。

第5位、晩成QBデイビッド・カー、満開か
 いまだ三分咲きだが、天才QBカーが5年目にして、パッサーレイティング5位(94・9)と力をつけた。ノーハドルのアンバランス攻撃に助けられたが、守備が低調でテキサンズはいまだ1勝4敗。カーの機動性を生かす戦術を、キュービアック新コーチの下で修行中。


(記録はすべて第6週=10月23日終了時点)


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