NFL快走!

リーグの繁栄はチームの繁栄であり、選手の繁栄である

フットボールガルバナイザー
後藤完夫
(TOUCHDOWN PRO2006年3月31日発売号より転載)

 

  もうすっかり2006年シーズンに入っているのが、日テレのフットボール担当グループで、あろうことか、3月上旬に06来年度のスーパーボウル予想をしろ、という無茶苦茶な企画を提案してきた。ボスの橋本敦Pは、K大時代ハンマーや砲丸を投げて遊んでいた強面のタフガイで、頼まれると断れない。
  『大反省会』と題した、同社放映の『NFL倶楽部』の2005年シーズンの打ち上げ企画のひとつだった。森、板井、河口、奈知の現役コーチグループと、松本、生沢、松田、それに私のジャーナリストグループの合計8人、もう放映が終わっているので見た方も多いだろう。大テーブルを囲み、ワキアイアイとしゃべれることは喋り、話せないことは笑ってごまかして進み、最終テーマがこれだった。
 2007年2月4日、マイアミの第41回スーパーボウルの対戦カードをボードに書いて一言、という趣向だったが、これは無理だろう。FA、ドラフト、トレードといった選手の移動に大きく左右されるし、コーチングスタッフすら確定していない時期だ。そこで、皆、自分の希望を書くことになったのでテンデンバラバラ、全員がまったく違う答えとなった(のが放映された)。じつは、収録直前には、2人だけが同じカードを書いていた。森コーチと私だ。これじゃ面白くないとどちらかがカードを変更して放映となった。どちらの答えが2人のコンセンサスだったか、推測したら楽しいだろう。森コーチも、楽しくなければNFLじゃない派なので、あの日はガルバナイザーの私と気分がシンクロしたみたいだ。外れのはご愛嬌で、今の気分を、予想カードに託すのも、早春の楽しみでしょう。
  日テレを早々に退散して、翌日から、フットボール底辺振興活動の一つである、日米フラッグフットボール交流試合『パシフィックボウル』のためにホノルルに行ったが(興味のあるかたは、http://www.footballjapan.orgをご覧下さい)、そこで、NFLの根幹を決定するニュースに接した。30年も前から、プロスポーツの理想の姿として紹介してきた、NFLのマネジメントの話題である。激変するスポーツ環境と折り合いをつけながら理想を創造するので、労働協約の形態で発表される。旧聞だが、その内容をまとめておこう。

進め!NFL
  今回、NFLオーナーと選手協会が2011年まで6年間の延長に合意した団体労使協定は、今までよりさらに一歩踏み込んだ、画期的内容となった。
  「リーグの繁栄はチームの繁栄」をテーマに、全チームが平等な利潤を追求してきたNFLだが、今回の内容は「リーグの繁栄はチームの繁栄であり、選手の繁栄である」を強調する内容となった。
  3月2日の交渉期限を2度にわたって延長、選手会とオーナーの間で緊迫した交渉が行われた結果、3月8日にオーナー会議の投票で30対2の賛成多数で協定が承認された。反対はシンシナティ、バファローの2チームだった。
  選手の報酬は人件費総額の上限を規制するサラリーキャップで管理されているが、利潤がオーナー側に偏重しているとして、サラリーキャップ枠の増額を要求した。これまでの協定では、05年には、DGR(リーグから全チームに公平に分配されるテレビ放映権収入及び入場料収入)の64・5%がサラリーキャップとなった。
  しかし、最近の傾向として、GDRに含まれないスイートルーム(特別観戦室)、ラジオ放送権料、広告収入などで収入をあげるチームが多く、選手会は、GDRでなく、それらを含めた総収入を基準にして、その59・5%をサラリーキャップの上限にすべきだと主張した。オーナーは総収入基準は認めたが、分配率を56%として譲らず交渉は難航していた。じつは、GDR以外の収入増加に積極的なチームとそれ以外のチームとの収入格差が拡がっていた。全米に点在するチームは所在地、環境、マーケット(人口)により収入格差が出るのは避けられない。低収入のチームは総収入の70%が選手報酬となり、高収入のチームは収入のわずか40%で選手報酬をカバーしていた。選手会は平均して総収入の65%が選手人件費に充当されることを希望した。オーナー会では課題となっていたチーム間の収入格差をどう是正するか、その対応に白熱したやりとりがあった。
  この結果、2006年のサラリーキャップは1億2百万ドル、2007年には1億9百万ドルになる。03年には7千5百万ドル、05年度シーズンは8千550万ドルだった。

 交渉が難航した裏には、経営姿勢が対立するオーナー間の意見調整があった。選手会の要求に答えるには、新たな財源が必要になる。従来のGDRに加えて、それ以外の収入も公平に分配する新たなレベニューシェア(利益の公平分配)のあり方が模索され、決定した。収入上位15チームが、順位に応じた金額を共同基金として提供、収入下位チームに分配することとなった。総額で8億5千5百万ドルから9億ドルと予定されている。

 選手は報酬アップを手に入れ、チームは収入格差を縮めた。「NFLは鎖の輪だ。すべて硬く結びついて、はじめて強さを発揮する」と述べ、レベニューシェアの基盤を確立したのはベル初代コミッショナーだったが、地元に根付いたスポーツ文化を重視する伝統的オーナーとマネジメントを最大活用して利潤を追求する新興オーナーの対立は、今後も決してなくならない。NFLのすごいことは、そんな環境でもつねに最善の道を創造して前進するところにある。プロスポーツ界の王者たる哲学がある。愛情がある。

 今回の協定で、第1巡指名で入団した新人選手の契約期間を4年以内に限定、FAへの近道を開いた。最近の傾向では5から6年間契約が多かった。3年連続してのフランチャイズ選手指名を自粛させる規則も制定された。また、チーム独自の規則違反への処罰は無効となった。上記はいずれも選手の自由を促進する決定である。

 この協定更改をまとめたタグリアブー・コミッショナーは7月引退を表明した。後任候補として、グッデル、マッケイ、ケースの3氏の名前が挙がっている。個人的には、若いマッケイ(現アトランタ・ファルコンズGM)の抜擢を期待するが、グッデル(副NFL社長)も好漢である。


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