QB Baiter
スーパーボウル一直線
ダンジー最後の切り札  ドワイト・フリーニー

フットボールガルバナイザー
後藤完夫
(TOUCHDOWN PRO2005年10月31日発売号より転載)

 インディアナポリス・コルツがリーグ唯一の6戦全勝、わき目も振らずにスーパーボウルへ突き進んでいる。
 序盤コルツを引っ張ったのは、リーグ一といわれる爆発的な攻撃ではない。満を持して展開する、名匠トニー・ダンジー(50歳)の切り札、積極守備である。オフに長期契約を結びコルツを最後のチームと決めたダンジーが、あと5年のダイナスティの構築に着手した、そう感じた。
 コルツのスリリングな攻撃守備の象徴が、RDE(右守備エンド)のドワイト・フリーニー(25歳)だ。背番号は93。
 185センチ、122キロだから、NFLのDEとしては、極端に軽く、背が低い。だが、桁外れのスピードとクイックネスがあり、周囲がスローモーションに見える。現在リーグの攻撃ラインから最も嫌がられているパスラッシャーだ。
 プロ入り3年目の昨年度は16サックを記録してリーグのリーダーとなった。今年は、相手が全神経を彼に集中しているために、第6週を終了して5サック、しかし彼とコンビを組むDEロバート・マシス(24歳)が自由になり、7サックでリーグ1位にいる。

 コルツには、パスの天才QBマニング(29歳)、完成されたWRハリソン(33歳)、理想のRBといわれるジェームズ(27歳)と3人の有力バックがリードする爆発的な攻撃がある。しかし、スーパーボウルへの道はつねに試合巧者のチャンピオン・ペイトリオッツに阻まれてきた。マニングがセット後に展開する戦術変更は的確だが、敵地でのオーディブルは大きなクラウドノイズで妨害されるのが常識となった。
 出色の攻撃だけでなく、攻守の均衡が不可欠だった。勝負の年に、実力者であるDTコーリー・サイモン(前イーグルス)を補強した。期待したSSボブ・サンダース、MLBゲアリー・ブラケットが順調に成長した。
「もし負傷さえ起こらねば、彼らは希望(優勝)をかなえるかもしれない」6点に抑えられたブラウンズのQBディルファーは苦笑するしかない。

 フリーニーの凄さに全米が沈黙したのは今期の開幕戦だった。レイヴンズにはオールプロLTのジョナサン・オグデン(31歳)がいる。203センチ、154キロの巨体だが抜群の運動能力もある。リーグで最強のパスブロッカーとフリーニーの直接対決に全米は注目したが、結果は、フリーニーの完勝だった。あのオグデンが動きについていけない。TEまたはRB、ときには2人共の補助がなければフリーニーをブロック出来ない。強圧に動揺したオグデンはフォルススタートの反則2回、バルジャーは被サックこそないが、1インターセプトを喫した。24対7でコルツが完勝した。オグデンは試合後、「彼はスピン動作が非常に上手い。スピンをパワーにしてさらに素早く動く」と、フリーニーのキラー・ムーブである360度スピンを評価した。

 フリーニーはダンジーの秘蔵っ子である。ダンジーズチルドレン第1号だ。
 両親はジャマイカ生まれ、母親のジョイは400メートル走でジャマイカ五輪代表候補だった。コネチカット州で育ち、高校2年まではサッカー選手でゴールキーパーだった。シラキュース大に進み、3年の時に、全米注目の対ジョージア工科大戦であの快足QBビックを4・5回サックして一躍プロの注目を集めた。NFLコンバインでは40ヤードを4秒38で走り、スカウト達をあきれさせている。サイズが小さくNFLでの評価は低かったが、ダンジーは第1巡11番指名で彼を獲得した。彼は期待に応え、1年目にわずか8試合出場で13サックをあげた。

 キャリアの試合平均サック数は0・865は公式記録が残る82年以降で、最高記録である。2位は伝説の人となったレジー・ホワイトの0・85、3位は同じくデリック・トーマスの0・75。
 フリーニーのもう一つの魅力は、そう、ファンブルフォース。別の表現をすればストリピング・ザ・ボール、腕を水車のように回してQBサックに向かい、ボールを叩き出す技術だ。これまでキャリア通算で18ファンブルフォースを記録した。
ダンジーは彼を評してこういった。「サックなどの記録を残さない試合もあるが、私は彼をランディ・モスと同等に評価したい。彼は存在するだけで、試合にインパクトを与えるからだ」。

 コルツはスーパーボウルだけに焦点を絞り込んだ戦いぶりで勝ち進む。6週終了時点で、一試合平均25・2得点(リーグ11位)、9・5失点(1位)で得失点差15・7点と、万全のスコア。計算どおりに勝てる得点と負けない失点を上げれば、あとは主力の負傷を避け、弱点の底上げを計る。
 昨年は32・9得点(1位)、21・9失点(18位)だった。これはこれで立派な数字だが、大味な試合展開で、緊迫のプレーオフでの緻密なゲームコントロールをと比較すれば、物足りなさが残っていた。

 序盤の話題では、連覇を狙うニューイングランド・ペイトリオッツ(AFC東)の3勝3敗がある。心配した負傷の多発に悩んでいる。DBは一時5人が負傷、とくにSSハリソン(膝)の欠場が大きくランとTEカバーはお手上げ状態だった。LTライト(足首)が抜け左ラインは新人2人となり、ラン攻撃低下の要因となった。ブレイディのオーディブルも敵地のノイズ妨害で今一歩。だが、ベルチック・ヘッドコーチの的確な応急対応は勝敗を度外視しても楽しい。11月7日(月)のコルツ戦での好試合を期待したい。それにしても、有力チーム相手に敵地4試合があった2〜5週の日程は、リーグ当局のパッツ潰しだと邪推されても仕方がない。
  
 序盤の活躍したのは、1敗のシンシナティ・ベンガルズ(AFC北)、デンヴァー・ブロンコズ(AFC西)、タンパベイ・バッカニアーズ(NFC南)の3チームだった。
 ベンガルズは攻撃2位、失点4位でM・ルイス・へッドコーチの卓越した再建策が光る。QBプラマーはパッサーレイティング113・6(2位)、WRチャド・ジョンソンは556ヤード(5位)、RBルディ・ジョンソンは544ヤード(6位)と新とリプレットの誕生、積極守備もTOレシオがプラス16(1位)と絶好調だ。
  ブロンコスはベル、アンダーソン等RBの適材起用と確実なボールコントロールで5連勝中。バッカニアーズはキフィンDCの指導のカバー2守備(1位)が絶好調、今期は8メンフロント、ブリッツ多用など変化を折りこみ、TOレシオもプラス6(5位)。新人RBキャデラック・ウイリアムスのラン(8位)でボールコントロール力もついた。(2005年10月23日)

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