ルイス・キャスティーロのケース
きみは名GMになれるか
〜Could andro have that much impact on a player’s performance?〜
(TOUCHDOWN PRO 7月号=5月31日発売号から転載)

   アンドロステンジオンをご存知だろうか。MLBでホームラン王となったマクガイアが使用して話題となった副腎ホルモンで、筋肉増強・脂肪減少・成長や回復を促進・性的刺激の覚醒効果もあるとされている。このホルモンは肝臓で筋肉生成に使われるテストステロン(男性ホルモン)に変化する。オリンピックやNFLでは使用を禁止されドーピング(禁止薬物)の対象になっている。
 
  NFLは大学ドラフトが終了、今秋にむけての体制がかたまってきた。しかし、いまだ入団交渉最中の新人も少なくない。 指名はしてみたが、現物確認で疑問符がついた選手もいるかもしれない。
  ドラフト指名までの裏話が米国スポーツメディアで散見されたが、貴方がGM(ジェネラルマネージャー)になったつもりで、判断してください、といった注釈付きの興味あるインサイドストーリーを見つけたので紹介したい。
   貴方は、今年のドラフト第1巡で守備タックルを指名しようと計画していた。ルイス・キャスティーロの身体、能力、技術、正確を評価するのが貴方のシゴトになる。 以下そのための資料を点検していこう。
  第一に、ゲームビデオテープ。
  試合テープで観察すれば、ノースウエスタン大に在学しているキャスティーロが卓越したペネトレート力をもっているのは明白だ。爆発力、クイックネス、スナップの瞬間を感じる本能的な感覚も優れている。プレーを遂行するというより、攻撃を破壊すると表現したい彼の能力を確認できる。ファイターで、ハッスラーで、タフである。このテープだけで判断すれば、彼は第1ラウンドの後半に指名する価値は十分ある。
  第2に、スカウティングコンバインを評価する。キャスティーロをインタビューすれば、彼の評価は第10または第11巡にあがるはずだ。誰よりもインタビューが上手く、常に正しい答えを正しいタイミ
 

ングで答えた。知性派、彼はアカデミックオールアメリカンであることも思い出すに違いない。しかも考え深く、ソフトな語り口で、好感が持て、慎み深い。彼は好青年で、娘のデート相手に連れて帰りたいと思うだろう。
 ワークアウトも衝撃的だった。テープで見た以上の運動神経を発揮した。225ポンドのベンチプレスを32回連続させた。40ヤードは4秒85、10ヤードも1秒69でいずれも守備タックルでは最速だった。第1ラウンドの中盤には指名すべき選手だと確信するに違いない。
  しかし、突然の電話がすべてを一転させた。ドラフトの12日前、彼のエージェント(プライオリティ・スポーツ)から電話が入った。コンバインでのドーピングテストで彼が陽性となり、アンドロステンジオンが発見されたと報告してきた。貴方は頭を抱え込む、コンバインでの彼の明るい顔を思い出し、さらに深く傷つくはずだ。
  2日後、エージェントから包みが届いた。キャスティーロからの手

  紙だった。キャスティーロは、肘の調子が悪く、コンバインに備えて、2月の2週間だけショートカットを選んでしまったと報告してきた。キャスティーロは、「私の生涯で最大の失敗だった」と書いてきた。
  もう一つ手紙があった。R・ウォーカー・ヘッドコーチからで、キャスティーロは30年間のコーチ歴の中で最も優れた人格と運動態度を持つ選手だと述べた、最上級の推薦文だった。ノースウエスタン大4年間の全ドラッグテストの証明書が添付してあった。入学時から、最終学年の12月まで、すべての結果がシロ(合格)だった。
  リサーチを開始した。全統計を見直し、彼の大学コーチと話した。とくに体重、40ヤードダッシュ、ショートシャトル、インクライン、垂直跳びの4年間の記録を丁寧に調べた。最終学年の3月と8月の約5ヶ月で、体重を23ポンド落とし、40ヤードを0.22秒縮め、しかも、インクラインを20ポンドも伸ばしているのが、納得できな
  かった。体重を落とせばパワーも減少するはずだ。こんな成果が猛練習で実現できるものだろうか、自問自答するに違いない。
  最終アナリシスを行う。もう一度、キャスティーロと会って話し合った。去年の夏体重を落としたのは、新守備ラインコーチがワンギャップテクニックを多用するのでスピードをつける練習をしたためと説明した。キャスティーロは、もしドーピングでポジティブとなったら契約ボーナスは返却すると提案してきた。彼は二度と間違いはしないだろう、だがそれが絶対とは言い切れない。アンドロがパフォーマンスに絶大な効果が与えるのだろうか。それも明確でない。さあ、貴方はどうするのか。


  キャスティーロは、大学ドラフト第1ラウンド28番目にサンディエゴ・チャージャースから指名された。