マニングの夢、パッツの現実
アメリカンボウルとセレクションミーティング2005

(TOUCHDOWN PRO 6月号=4月30日発売号から転載)

2005年5月31日
  マニングとヴィックを見逃すな!
  凄いアメリカンボウルが実現した。
  ペイトン・マニングとマイケル・ヴィック、この2人と同じ屋根(同じドーム)の下にいれるだけでも幸運と感じるマニアはタクサンいるはずだ。
  8月6日(土)午後5時キックオフ、通算14回目となるアメリカンボウル(NFL TOKYO 2005)では、現在NFLで最もエキサイティングな2チーム、インディアナポリス・コルツ(AFC南地区)とアトランタ・ファルコンズ(NFC南地区)が対戦する。76年のスターボウルを含め過去15試合あった日本でのNFLプレシーズンゲーム史上最高のカードである。
  2人のクォーターバック(QB)は見ておく価値がある。コルツのマニング(NFL8年目、29歳=試合当日、テネシー大卒)はリーグ史上最高のパッシング記録を持つパスの名手である。ファルコンズのヴィック(NFL5年目、25歳、ヴァ
  ージニア工科大卒)は、リーグ史上最高のQBラッシング記録を持つ、快足ランナーでもある。マニングの華麗な弾道に酔うか、ヴィックのスリルにしびれるか。たぶん、出場機会は第1Q15分間だろうが、投資する価値は十分にある。
  2月のプロボウルで、マニングに一つだけ質問した。とても、印象深い答えが戻ってきた。練習後にロッカーに戻るマニングに歩きながら、「7年間のプロ生活で最も印象に残るシーンを教えて」と訊いた。マニングは立ち止まって、誰もいないアロハスタジアムの観客席を3、4秒見つめてから、向き直って答えた。
「どれかを一つあげるのはとても難しい。でも、今言えるのは、僕がまだスーパーボウルに出ていないことだ。もし、スーパーボウルに出れば、それがボクにとっての、最も忘れられないシーンになるのは間違いないと思う」
  こんなヤツだ。見に行ったら、どうだろう。
 

王者パッツの選択
  今週末はカレッジドラフト(アニュアル・セレクション・ミーティング)である。第1位ドラフト権を持つフォーティナイナースが、ショットガンQBのアレックス・スミス(ユタ大)を指名することは間違いないだろうが、WRブレイロン・エドワーズ(ミシガン大)もプロ向きの魅力がある。当日トレードアップして、バッカニアーズかヴァイキングスが指名争いに加わる可能性もなくはないが、詳報は本紙ドラフト特集で確認して欲しい。
  今年のドラフトで一番関心があるのは、ペイトリオッツ(パッツ)の選択だ。そして、キャップコントロールに定評があるファルコンズ、ジェネラルマネージャーのマッケイの指名にも興味がある。
  周到なチーム作りで王朝を築いたパッツだが、シーズン終了後にチームの主力であるラインバッカー陣の再評価、再構築が必要になった。
  きっかけはプロボウル直後に脳卒中で入院した、守備の原動力

  でもあるILBブルスキー(32歳)の体調不良問題だ。2月末には、大ベテランの控えILBファイファー(36歳)も解雇した。インサイドだけではない。OLBにも課題がある。ビッグゲームでは千金のプレーをみせるマギネスト(34歳)、ヴラベル(30歳)の2人だが、揃って翌2006年には契約が切れる。最終年度に契約更改すると高額のサインボーナスが発生するのがNFLの常識。キャップコントロールで、どちらかあるいは両方の解雇もありえる。そうなると、この1、2年で自慢のLB陣は、ILBジョンソンを残し、総入れ替えだ。OLBの控にはスーパーボウルでスタートしたコルヴィン(腰骨折=現在も金属支持棒が体に残る=でほぼ1年間欠場したが、クイックネスは秀逸)がいるが、万能のブルスキーの代理はカンタンには見つからない。
  また、パッツは隠れた優秀タレントを下位指名で獲得する(前号で紹介した)カレッジ方式育成によるチーム作りに定評がある。
  となると、今年のドラフトはファイファーと同時に解雇(つまり卒業)した、リーグを代表するCBタイ・ロー(昨季のほとんどは負傷欠場)の穴を埋める1年生の獲得が第一だろうが、複数のLBを獲得することになるのではないか。
 パッツのカレッジ方式育成の典型は、攻撃ライン。最高位指名が2巡で1人、あとは5巡指名1人、さらに低指名が3人、この5人が王朝時代を支えるスターターたちである。そういえば、来日するファルコンズもNFLトップのラッシング攻撃記録を残したが、7巡指名3人、4巡1人、FA1人の構成で攻撃ラインにエリート選手はいない。
  ファルコンズの攻撃ライン・コンサルタントのアレックス・ギブス(前ブロンコスOLコーチ)は、その裏側を、「新人攻撃ラインはチームにあわせて教育することが欠かせないが、高位指名選手には教育の時間が認められないし、また教育されることに慣れていない」と証言していた。(蛇足ながら、攻撃ライン教育の重要性が浸透してい
 

るNFLでは、高額報酬で攻撃ラインコーチ獲得競争が起こっている。昨年チャージャーズをレベルアップさせたホウクは、今季ドルフィンズに85万ドルで引き抜かれた。)
 一方、パッツのスカーネッチアOLコーチは、攻撃ラインを総論で定義する危険性を指摘している。チーム作りの方針に沿ったタレント選択が望ましいという正論である。「パッツは、RBディロンはラインに開いた穴を走るのに優れ、QBブレイディはショートパスで攻撃のリズムを作り、素早くルートを走るレシーヴァーもいる。これらの要素があるから、攻撃ラインに爆発的なブロック力を求めない、同時に、ラインのブロックを軽減している」。
  話がぐんぐん反れて申し訳ないが、NFL32チームのチーム作りの哲学がドラフト指名で明確になり、新人選手のタレントより、そちらの方が気になってしまう、4月下旬である。(4月23日)

   とここまで書いて、始まったドラフト中継を見ると、1位指名スミス、3位指名でWRエドワーズ(クリーブランド)と高指名は順当だが、なんと、パッツは第1巡(32位指名)で、ガードのローガン・マンキンズ(フレスノ大)を指名した。ガードとしては一番目の指名。今年はガード不作の年で、指名は2巡からだと噂され、しかもマンキンズは2番手といわれていたが、パッツは体力(ブラウン、ヴァージニア大)より技術とセンスのあるT兼任も可能なマンキンズを獲った。しかも、第2巡の指名権をレイヴンズに譲り、第3巡(84位)でやっとCBエリス・ホブス(アイオワ大)を、同じく3巡(100位)で再びGニック・カクツアー(トレド大)を指名した。FAで放出したLGアンドゥルッツィ(29歳)の穴が相当大きいのか。カレッジでも不測の中退もあるし、とちょっと複雑な心境だ。
  トレードを含むオフの動向を追って、パッツ05年度チーム作りのポイントを確認したい。(4月24日)