24守備の魅力
第39回スーパーボウルのサイドライン

(TOUCHDOWN PRO 4月号=2月28日発売号から転載)

2005年3月28日
 

 試合前の記者会見から、ベルチック・ヘッドコーチもQBブレイディもそしてパッツ全関係者が冷静だった。一方のイーグルス選手は、25年振りの出場からか、顔面を紅潮させた選手が多く、ほとんどのマスコミがイーグルスの勝機はないと感じていただろう。
  しかし、2月6日(日)オールテルスタジアムの4分の3を埋めたグリーン色のファンの熱気に押され、イーグルスが大善戦した。伯仲の展開を支えた冷静な洞察力、状況分析力、第39回スーパーボウルのサイドラインをすこしだけ覗いてみよう。

 開始早々、第1Q、互いのゲームプランを確認しあう感じの展開だった。
  脚骨折で5週欠場だったエースWRオーエンスが登場、チームの最初の捕球者となって、イーグルスの攻撃が進んだ。しかし、前進はするが得点とならない。マクナブがインターセプトを喫し、TEスミ

  スがファンブルロストして、先制したのは20分経過後、第2Q5分だった。
  結局、イーグルスラッシングは45ヤードに完封され、1人攻撃を背負ったマクナブのパスだったが、この試合357ヤード、3TDを獲得したが、3インターセプトを喫した。ペイトリオッツが狙ったターンオーバーバトルに巻き込まれ、苦渋の敗戦を喫したのだった。
  マクナブを追い込んだ、ベルチックコーチの守備戦術は、4メンフロントとブリッツだった。ご存知の方も多いが、パッツの原動力はルックス(外観)とスピードで相手攻撃を攻撃する34守備だが、この試合でその3メンフロントは数えるほどで、ほとんどを4メンで展開した。しかし、42守備にみえるこの体型は、じつは昨年度からサードダウン・ロングではおなじみの24体型だ(別掲、パッツ・ヴァーサタイル守備の原則参照)。主たる狙いはDEの位置に配した、マクギネストとコルヴィン、2人のLBによるコンテインでマクナブの
 

モビリティ(動き)を封じることだった。ベルチックはマクナブの脚力を止めることを守備の第一課題とした。
  加えて、試合後ベルチックが「レギュラーシーズン1年分」と表現した、多数のブリッツでマクナブを襲った。インサイドLBブルースキーがその主力となった。ブリッツに追われ、コンテインの道を塞がれたマクナブは、投げ急ぐしかなかった。
ブリッツのお守り役として、経験不足といわれた若手守備バックそしてNBブラウンがマンカバーを過不足なくこなしたのも大きいだろう。CBゲイによれば、レギュラーシーズンのゾーンカバレッジを捨て、守備の98%はマンカバーだった。
  イーグルスファンには申し訳ないが、オーエンス(9回、122ヤード)なら、マンカバーで引いて守るCBサミュエルやゲイを抜くのは、さして難しくないはずだ。ゼロTDとインターセプト・フォース3回(こんな言葉ないが)に抑えた若手パッ

  ツ守備バックを誉めたい。マクナブでは、先制点となったTEスミスへの入魂のクイックリリースが光った。
 イーグルスの攻撃を1TDに抑えた、第2Q5分以降は、点差の広狭はあったが、パッツのリズムとなった。
  それまでは、イーグルスのジョンソン守備コーディネーター指導のブリッツが予想以上鋭く、ブレイディを悩まし、慌てた攻撃ラインが反則を連発(2回)していた。
  知られていないが、ブレイディはブリッツ対応が下手というレギュラーシーズンの数字があった。ブリッツを受けると、ブレイディのパスレートは79・5となり、リーグ18位と中の下となる。7TDで6被インターセプト。一方、ブリッツなしだと、21TD、8被インターセプトと安定する。スーパー直前、予期されたブリッツへの対応に、ブレイディは多くの練習時間を割き、ワイズ攻撃コーディネーターと深夜会談も重ねたようだ。
    第1Q2回の攻撃で、僅か7ダウン、5分弱の攻撃機会しかなかったブレイディだが、これでブリッツを読みきった。ベルチック、ワイズの卓越したゲームデイ分析が光りだした。
  ブリッツ対策の一つは、ロングカウントだった。じれた守備のスナップ前の微妙な動きで、ブレイディは守備の仕掛けをつかんだ。守備を読めれば、オーディブルでプレーを変えた。ランの方向を変え、ホットパスをコールして、ブリッツの弱点をついた。
  交代QBミラーの試合後に証言によればオーディブルしたのは「プレーの50%」。
  攻撃がリズムをつかんだ、2Q5分のドライブ開始のプレーセレクションもワイズらしかった。SE2人、SB2人の4WR体型からの定石破り、意表をついた、TBディロンへのスクリーンパスを2回続けた。
  これで、ライン中央部からのブリッツが止まり、中立に戻った中央部にラッシングの穴が開きだした。このドライヴはブレイディのフ
 

ァンブルで得点は逸したが、ゲームはすべて、ベルチックのシナリオ通りに動きだした。
  来05年度は、ワイズがノートルダム大へ去り、クレネールもブラウンズのヘッドコーチと移り、その他数人のアシスタントがチームを離れる。コーチング主導のパッツの地盤沈下を予想する声もあるが、心配はしていない。彼には、カレッジのチーム作りをアレンジした、周到なチーム作り哲学があるからだ。
  蛇足ながら、1〜3巡に5つのドラフト指名権を持つイーグルスも、デトロイトスーパーボウルの最至近距離にいるチームの一つである。

ペイトリオッツ・ヴァーサタイル・ディフェンスの原則―スーパーボウルの底辺

  最も攻撃的な守備戦術といわれるパッツ守備体型の基本ルールを紹介しよう。パッツ守備の攻撃性は行動にだけでなく、仕掛け

  つまり守備配置(ルックス)にあることは特集号で紹介した。適材適所の配置から、変化とスピードで、相手攻撃の混乱を誘い、守備の疲労を防ぐ考えでもある。起用・対応が的確なのは、ベルチックを筆頭とするコーチの能力と努力である。
  基本的には、フロントセブン(守備ラインとLB)を攻撃戦術、ダウン・アンド・ディスタンス、得点、試合残り時間に応じて柔軟に起用する。この戦術は、ラン、パス両方に対応出来る能力を持つ、複数のベテランLBがいることから可能になった。とくにヴラベル(番号50)、マッギネスト(55)、ブルースキー(54)とパスラッシュもパスカヴァレッジもこなせる3人が揃うのはリーグでは珍しい。(05年加筆、コルビンを加えて4人となった)
 第1ダウン・10ヤードでは、第一にラン対応を意識した守備。NGにテッド・ワシントン(92)をいれた標準的な34守備体型だ。左インサイドLBにファイファー(95)、右
  インサイドにブルースキーを、右アウトサイドLBにヴラベル、左にマッギネストをいれる場合が多い。(図1、第1ダウン・10ヤード)
  第2ダウン・ロングとなると、パス対応も視野にいれた、ニッケルバックを起用した5人バック。ただし、攻撃の混乱を誘うために、スクリメイジラインに5人の選手を並べることが多い。ただし5人のうちラインはDTグリーン(97)、DEセイモア(93)の2人だけ、残る3人はLBがライン上にあがる。したがって、第2陣にいるLBはブルースキー1人となる。この配置から誰がラッシュして誰がドロップするのか相手QBと攻撃ラインは悩み、混乱することになる。通常は、ヴラベルかファイファーがドロップすることが多い。(図2、第2ダウン・ロング)
 第3ダウン・ロングになると、典型的なパス守備体型である2LB、5DB。つまりルックス(外観)は4−2体型。ただし、4人のフロントラインのうち本職はDTグリーン、セイモアの2人で、DEにはLB
  のマッギネスト、ヴラベル(05年はコルビン)が位置する。じつはこの2人は大学時代にはDEだったのでパスラッシュにも定評がある。ただし、この配置からどちらかがドロップして、代わりにILBのインサイドLBかDBの1人がパスラッシュに加わることも多い。ここでもQB、攻撃ラインに混乱が起こり、ブロックのアサインメントが乱れることとなる。ヴラベルがデロウムをサックしたのはこの配置から。DEにはいったOLBのヴラベルがスピードで外側を回りきってデロウムに追いついた。(図3、第3ダウン・ロング)

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  このコラムは、昨2004年4月号(2月28日発売号)に掲載した内容を転載しました。ただし図は削除してあります☆